イベント運営は“肌感覚”から脱却できるか? 「ファンの分析」が秘める可能性:既存ファンがリピートしていなかった……!(2/4 ページ)
イベントの顧客分析は難しい。例えばライブに参加する際、A社でチケットを買い、B社で配信映像を視聴し、グッズはC社のサイトで購入する──というように、複数の企業がかかわり、データをばらばらに持っているからだ。この現状を変えようと取り組む、バルス(東京都千代田区)のCEO、林範和氏に話を聞いた。
バーチャルタレントの運営から、生まれたシステムとは?
バルスはこれまで、3DCGの制作や、XR技術を用いたバーチャルライブシステムの構築などを行ってきた。自社で実験的に「銀河アリス」「MonsterZ MATE」といったバーチャルタレントを抱え、主催者としてイベント運営を始めた際に、こうしたエンタメ業界のデータ活用の課題に気が付いた。
自社タレントのため、チケットやコンテンツの販売、有料配信などを一貫して行うシステムを構築した。コロナ禍を受け、オンライン配信やハイブリッド型のイベントが増えてニーズを実感したことから、そのシステムを「SPWN portal」として提供を始めた。
SPWN portalを使うことで、アーティストは独自のWebサイトを作ってチケットやグッズを販売できる。また、顧客・収益管理ツールにより、ファンの行動を見える化でき、宣伝やイベントの企画、グッズ販売に生かせるという。
グッズを売り続けることによって、ファンがどこで何を何回買っているか、どういう人が買っているかといったマーケティングデータを取得できる。これらのデータから、例えば自分たちのファンは地域的にどこに多いかなども分かる。
例えば今までは三大都市でライブをしていたけれど、実は東北地方にファンがたくさんいるから東北に行った方がいい、といったことが分れば、今後の戦略を立てる指針になる。
「別会社がばらばらにサービスを提供していて、グッズとチケットを一括で売ることもあまりできていない。そんな中、SPWN portalでは顧客との接点を一括管理できるようにしています。ライブ動画を見ながらグッズを購入できるライブコマースや、ライブ中にファンに意見を聞く機能も用意しています」
システムは改善を重ねている最中だ。今後はデータを取るのが難しいとされてきた、リアル会場での物販もサービス内に取り込もうとしている。
例えば、今まで並んで買うしかなかった会場でのグッズ販売に、オンラインで配布する整理券システムを導入すると、ファンが買いやすくなるのはもちろん、「密を避ける」ことにも役立つ。
売れ筋商品もすぐに分かり、データを分析して次回以降に生かせる。また、ECサイトと会場物販の在庫管理を一括して行うことで、在庫が足りなくなったり、余ったりすることを防ぐ。
これまで、会場物販の混雑や行列をコントロールするために、主催者はレーンや警備員を用意していた。その分のコストカットもできると、林氏は考えている。
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