イベント運営は“肌感覚”から脱却できるか? 「ファンの分析」が秘める可能性:既存ファンがリピートしていなかった……!(4/4 ページ)
イベントの顧客分析は難しい。例えばライブに参加する際、A社でチケットを買い、B社で配信映像を視聴し、グッズはC社のサイトで購入する──というように、複数の企業がかかわり、データをばらばらに持っているからだ。この現状を変えようと取り組む、バルス(東京都千代田区)のCEO、林範和氏に話を聞いた。
紙はもういらない? 来場者の反応とは
これまでの試験導入では、想定外のこともあった。林氏は「リアル会場では紙に印刷した方がオペレーションしやすいと思ったのですが、お客さんはもうスマホでいいという感じでしたね」と話す。
一方で、チケット、整理券、グッズのオーダーシートなど、全てをオンライン化していくと、現場で戸惑う恐れもある。
林氏は「イベントで使うQRコードが複数になると、どれを出せばいいのか分からなくなる。1つのQRコードで完結できるようにしないと、間違いも増える。連続して使えるUXが需要だと感じています」と、今後の課題を話す。
また、多くのファンにシステムを利用してもらうには、便利だと感じてもらうことが必要だ。
「現地で現金で買う人でも、購入履歴が分かるとか、購入したグッズを管理できるといった付加価値を付けていく必要があります。まずは今度のイベントで、SPWN portalを利用して購入している人と、現金で直接買う人の比率などを確認してみたいと思っています」
現在は、主催者がファンを理解できるようにする段階だ。この後は、「マーケティングの観点では、アップセルやクロスセルをしやすくしていきたい」という。ログインしたときにアイテム提案が出てくる、チケットを買ったらグッズのポップアップが出てくるというような、小売りサイトではすでに当たり前にやっている“ついで買い”を促す仕組みを取り入れていく。
主催者はファンを理解することで、コストダウンできるメリットがありそうだ。購買行動を予測できるようになると、興行のリスクも下がっていくだろう。
一方、ファンが直接的なメリットを感じることはないかもしれないが、適切な在庫管理によりグッズの買い逃しがなくなり、地方でもニーズが多くある地域では、イベントが近くで実施され、行きやすくなるかもしれない。
「明確なメリットは実感しにくいかもしれませんが、確実にストレスは減っていくと思います」
チケットを「手軽に売る」流れは来るか
これまで、チケットの多くはプレイガイドで販売していた。全国にリアルな販売網を持つプレイガイドが顧客情報を持ち、主催者は限定的な情報しか得られないことに、違和感を覚えることはなかった。
しかし現在、チケットはWebで購入し、QRコードを表示して現地で受け取るという手段が増えている。決済手段も、コード決済やコンビニ払いなど、クレジットカードを持っていなくてもさまざまな方法で購入可能だ。
イベントの宣伝についても、かつてはコンビニやプレイガイドの店頭で露出されることが重要だったが、今、ほとんどのファンはアーティストのSNSから情報を得てチケットを購入している。
このように、プレイガイドの価値は相対的に下がっている。
林氏は「手軽にチケットを売って顧客情報を入手した方がいいのではないか、と考えている人が増えてきていると思います」と話し、今後の商機に期待を込めた。
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