データ管理で“ズタボロ”のLINEと経営統合した、ヤフーに圧し掛かる責任:本田雅一の時事想々(2/3 ページ)
LINEが個人情報を中国のサーバに保管していたというニュースが話題になったのは、今年3月のこと。当時、真摯な対応を感じた筆者だったが、その第1次報告として6月11日に出されたレポートは、信頼をさらに揺るがすものだった。
LINEの個人ユーザー間のトークに投稿された画像や動画、その他のファイルの保管場所に関して非を認め、6月末までにデータを国内に移管していると思いきや、2024年までに移管する計画であることが表沙汰になったことはマズイ。そして、最もあきれたのは官公庁や自治体に対して虚偽ともいえる説明をしていたことだろう。
LINEは過去3回(13年、15年、18年)に渡って“対外的な”データ保管場所の説明をどうするかについて検討していたことが明らかになったが、そのいずれも国外への越境はないとしており、個人情報の管理は国内に閉じていると説明していた。
Yahoo!ブランドは米国発祥だが、Yahoo! JAPANは米Yahoo!とは独立した日本のネット企業として、業界を牽引(けんいん)してきた信頼に足るブランドだ。特別委員会を設置した目的も、膿を出し切る意味合いが大きかったのだろうが、そこであらわになったのはさらに根深いウソだった、ということになる。
サービスの統合、発展と管理問題を並行して解決できるのか?
こうなると「LINEは国外にデータ保管していたことを隠ぺいしようとしていたのではないか」との疑いをかけられても致し方ないところだろう。9月には未報告のままとなっているLINE Payのデータも含め、最終報告がまとめられることになるが、さらに杜撰(ずさん)な管理体制が明らかになるかもしれない。
“隠ぺい”と表現するには、カモフラージュなどが行われておらず、実際には経営側の考えるサービスの提供体制、データ管理に対する考え方と、実際にサービスを実装、運用する現場の間の距離が遠く、実質的にサービスの開発・運用ガバナンスが皆無だったのではないかとも想像できる。この状況は過去の杜撰なデータ管理がもたらす信頼失墜よりも大きく、長引く問題になるだろう。
特別委員会の座長を務めた東京大学院の宍戸常寿氏は、中心となるトークサービスに追加機能を加えていく際、サービス全体のデータ管理ではなく機能単位での実装にしか目が向いていなかったことが、個人データの保管場所という視点を失わせていた可能性を指摘している。
言い換えれば、サービス、アプリを開発していく上で、LINEのサービス全体を見渡す視点がないまま成長してきたともいえる。単にガバナンスの問題だけではなく、積み重ねてきた開発成果そのものを見直し、再設計が必要になれば、Zホールディングス全体の戦略にも影響する。
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