ジョブ型雇用のために、人事部門に求められる自己改革:いまさら聞けないジョブ型雇用(4/7 ページ)
ジョブ型雇用を日本企業で確実に根付かせていくためには、まず人事部門が変わらなければいけないことを説明します。
日本企業にアジリティーが不足していると書きましたが、その主たる原因の一つが、このボトムアップ型の計画策定プロセスです。計画を取りまとめている間に、経営環境は刻々と変化していきます。全社の計画が仕上がったときには、その前提となっている環境がすっかり変わってしまった──などという事態も十分に起こり得ます。
また、事業環境に非連続的な変化が生じた際には「選ぶもの」と「捨てるもの」を明確に決めなければいけません。ボトムアップで計画を組み立てると、その中身は各部門がやりたいことの総和になるので、メリハリをつけた意思決定が難しくなります。経営資源が分散してしまい、変化対応の面舵をいっぱいにとることはできません。
人事に関しても、他の計画と同様に日本企業は極めてボトムアップ型です。日本企業では、ローテーション(定期的な部署間異動)や人事評価の最終決定を人事部門が行っているので、人事は中央集権的だと思われるかもしれません。しかし、ローテーションも評価決定も、ルールが既に存在しています。そのルールにのっとって各部門が考えた案を、人事部門が全社のバランスを見ながら調整している、というのが正確な実態です。
異動や配置にせよ、評価にせよ、人事部門が自らの意志を持って計画を立案し、全社に展開しているわけではありません。経営企画部署と同様に、調整を旨としている日本の人事部門にも、アジリティーが不足しているのです。
昨年来のコロナ禍によって、どんな企業にも試練のときが訪れています。企業経営の前提となるマクロ経済には不可逆的な変化が起こり、かつてないVUCAの時代に突入したといえます。こうした中で日本企業が生き残っていくためには、環境の変化に即して経営戦略を素早く修正して実行する、変化適応型の戦略能力が必須になるでしょう。
言うまでもなく、人事戦略についても同様に、敏捷(びんしょう)性の高い修正と実行が鍵になります。経営戦略のアジリティーが高まると、企業が必要とする人材が、質・量ともに刻々と変化していきます。人事部門は、この人材ニーズを機動的に満たしていくべく、自らのアジリティーを高めていかなければいけないのです。
適所適材のアジリティーを高めるために
これからの人事部門には、これまで以上にアジリティーが必要だといいました。ここからは、人事のアジリティーをどうやって高めるかを論点として考えていきましょう。
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