ジョブ型雇用のために、人事部門に求められる自己改革:いまさら聞けないジョブ型雇用(5/7 ページ)
ジョブ型雇用を日本企業で確実に根付かせていくためには、まず人事部門が変わらなければいけないことを説明します。
この論点を考えるにあたり、前提に置くべき問題があります。それは、経営体制の分権化という問題です。先に述べたように、日本企業における一般的な意思決定はボトムアップ型で行われてきました。そして、このボトムアップ型の計画策定プロセスが、日本企業のアジリティーを損ねる主要因になってしまいました。
そこで、意思決定の機動性を高めるべく、日本企業は分権化の試みを始めています。平たく言うと、分権化とは各部門に権限を委譲し、できるだけ各部門でさまざまなことを決定することです。現場に近いところで素早く意思決定し、周囲の変化に機敏に対応する、というのが分権化の趣旨になります。
これまでも、日本企業では経営体制の中央集計化と分権化について議論がなされ、両極の間を行ったり来たりしてきました。しかし、昨今の分権化の流れは、今までとは異なりより本格的なものであると思われます。VUCAの時代を乗り切るために、各部門への権限移譲は避けて通れないテーマなのです。人事部門のアジリティーを考える上で、この分権化が一つの鍵になります。
繰り返しになりますが、人事戦略の目的は、上位に位置する経営戦略を実現するために、適所適材を推し進めることです。現在、そしてこれからの不確実性が高い経営環境へ適応するために、人事部門は刻々と変化する人材ニーズへ、配置・教育・採用といった手段を総合的に駆使して対応しなければなりません。しかも、迅速性が何より求められます。分権化が進んだ企業組織の中で、人事部門が適所適材のアジリティーを獲得するために、自分たちの体制を見直す必要性が出てきています。より各部門へ寄り添った形に、体制を変えていかなければならないのです。
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