アイドリングストップのクルマはなぜ減っているのか? エンジンの進化と燃費モードの変更:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
アイドリングストップ機構を備えないクルマが登場し、それが増えているのである。燃費向上策のキーデバイスに何が起こっているのか。
燃費は向上しても、ユーザーの負担増が問題視
電装品を動作させる電力を供給するバッテリーは、実のところセルスターターに電力を供給することが役割の大部分だ。ところが対策されていても慢性的な充電不足によりジワジワとバッテリーは弱っていくことが避けられず、大半のアイドリングストップ車は車検毎にバッテリーの新品交換を余儀なくされているようだ。
その証(あかし)にカー用品大手のオートバックスでは、純正品よりも安く高性能なPB品のバッテリーが良く売れているという。少しでも安く、しかも良い部品を装着しようというユーザーの心理が現れているといえるだろう。それでも4万円前後の出費が車検毎に追加されるのは、ドライバーにとって結構な負担である。
こうしたユーザーの不満も、アイドリングストップの効果を疑問視させることにつながっている。そして自動車メーカーとしては、燃費基準がJC08からWLTCに変更されたことが、アイドリングストップを廃止させる理由としては大きい。
JC08モードは信号待ちなどを想定して停車時間が定められていたから、アイドリングストップを利用することでモード燃費の数値を伸ばすことができたのだ。
それに対しWLTCは市街地だけでなく、郊外や高速道路での走行を想定したモードも加わり、それぞれのモード燃費のほか、トータルでの平均燃費を算出して表示する。つまり、市街地でのアイドリングストップによる表面上の燃費表記への貢献はかなり薄らいだのだ。
これはパワートレイン全体で燃費改善が図られたことも当然、影響している。ともあれ新燃費基準とパワートレインの改善によって、アイドリングストップ機構はマストアイテムではなくなったのである。
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