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「打倒ヤマダ」のヒントは復調中のブックオフにあり? リユース(中古品売買)業界が生き残るヒント:小売・流通アナリストの視点(1/5 ページ)
ヤマダデンキがアウトレット部門へ注力し始める。迎え撃つリユース業界は、コロナ禍でも比較的好調で推移している。中でも、生き残るヒントはブックオフにあるかもしれない。
先月、日経新聞で「ヤマダ、中古家電店を100店体制に ESG対応急ぐ」という記事を見かけた。ヤマダホールディングス(HD)傘下であるヤマダデンキの中古専門店「ヤマダアウトレット」の店舗数を、今後2年で2倍の100店舗に引き上げるという内容だ。
ヤマダHDの2021年3月期決算は、コロナ禍巣ごもり需要の追い風で、連結売上高が対前年比8.7%増の約1兆7525億円と好調だったようだ。中でも郊外の中古品を併売する店舗の売り上げが、新品のみの店舗より客数が1割ほど高いということから、中古品の取り扱い強化を加速することにしたという。
ヤマダは、今期から家電+家具+住宅設備という新業態店を年間30店舗ほど出店する計画で、商圏の重なる既存店を中心に、中古取り扱い店に転換していくということらしい。かねて資源循環、リサイクル、廃棄物処理事業をグループ内に備え、資源循環型ビジネスモデルを整えてきたヤマダHDは、リユース事業もSDGsへの取組みの一環として位置付けて強化していくことを計画しており、23年のリユース家電生産台数(PCを除く)は20年比4.5倍にすることを目標としているようだ。
中古家電を売るようになると、新品家電の売り上げが減るのでは――という懸念の声もあったというが、ヤマダはアウトレットの動向を見て、今の主要顧客層である、高機能の新製品を求めるファミリー層とは「別」の顧客層の開拓につながると判断しているようだ。
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