行動経済学はビジネスに、どう役立つのか:さまざまなシーンで注目(3/3 ページ)
行動経済学がさまざまなところで注目され、具体的な応用シーンが生まれている。 企業での導入、展開はどうなのだろうか。
大阪大学の大竹教授が言うように、「選択肢の提示が企業側の短期的な利益最大化という視点だけではナッジとは言えず、最終的にそのサービスを受ける消費者本人にとってより良い選択であることが前提」となる。最終的にサービスを受ける消費者を顧客企業に置き換えれば、自分の会社が儲かるからだけではなく、顧客企業のより良い選択になることが必要なのだ。
B2Bの場面で、あえて、行動における非論理性をあげるとすれば、担当者においては「プライド」「自分ごと(自分がかかわる)「自分のポジショニング(社会的地位)」「今の危機を乗り越える」といったことはあるかもしれない。
あくまで、「顧客企業のより良い選択」のために、担当者(あるいはその上司)が持ちそうな感情的な行動原理を考えたうえで、「施策」を選択するべきなのだろう。
その際に参考したいのが、イギリスのナッジユニットが考案したという「EAST」と呼ばれるフレームワークだ。「E」はEasy(簡単)、「A」はAttractive(魅力的)、「S」はSocial(社会的)、「T」はTimely(タイムリー)となる。担当者(意思決定者)が簡単で魅力的だと感じ、しかも、社会的にも時間的にもふさわしいものを選ぶようにする。
優先順位は、状況によって変わるとは思うが、この4つの視点を考えながら企画を考えていけば、間違えることも少ないだろう。
もちろん、倫理的かどうかは、必ず押さえておくべきだろう。前述したが、「悪用」「ひっかけ」と思われてしまっては、これまでの信頼関係をすべてなくしてしまうこともありえるから注意が必要だ。
組織の行動といっても、最終的に意思決定するのは、組織内の個人だ。組織対組織のビジネスにおいて、行動経済学がどう活用できるのか、追求していくポイントは多そうだ。
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