オリンピックで「人流」は増加するのか 見落とされている過去の“事実”:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)
合理性を欠く新型コロナウイルス感染症対策に耐え切れない飲食店が続出している。「緊急事態」と「まん防」はいつになったら終わるのか。筆者がそろそろ「正常化に向けた準備を始める時期」と考える理由は?
コロナの危険度をどう考えるべきか
新型コロナウイルス感染症は、どれだけ危険な病気なのか。
新型コロナで亡くなった人の数は、厚生労働省によれば1万4496人(6月23日現在)だ。
厚労省に確認したが、この数字は、亡くなった後にPCR検査を実施して、陽性反応が出た人をカウントしたもので、“新型コロナ関連死”となる。交通事故で亡くなっても、PCR検査の結果、新型コロナによる死亡したとカウントされる。
では、医師が死亡診断書で、新型コロナで亡くなったと認定したのは何人なのか。その数字は、厚労省の人口動態調査に記されている。20年1〜12月で3466人だ。人口動態調査は半年後に公表されるから、今はもう少し増えている。
死因で多いのは、「悪性新生物(腫瘍)」だ。これは、ガンを指しており、37万8356人となる。インフルエンザの死亡者数は、前年の3575人から954人に激減している。
全死亡者数は、137万2648人で、前年より0.6%減っている。つまり、日本中でコロナがまん延して死者数が急増している事実はない。
新型コロナで亡くなった3466人の命が尊くないと言っているのではない。統計として、ガンが死因の約3割を占めるのに対して、新型コロナは0.25 %となっている。ただし、コロナ関連死は今年になって1万1000人以上も増えている事実があり、基本的な感染症対策は必要だ。
また、ワクチンの効果か、幸いなことに重症者数は5月26日には1413人だったが、6月27日には567人まで急減している。
新型コロナがどれだけ怖い疫病なのかは、その人のとらえ方による(もちろん変異株の重症化リスクや重症患者用病床使用率は注視すべきである)。
しかし、諸外国で飲食店が開いてきている現状も鑑み、通常営業に踏み切る店が増えてきた。5月に日本医師会の中川俊男会長ら幹部が、自民党の自見英子参議院議員の政治資金パーティーに出席していたことが発覚してから、流れが変わった感がある。
東京都では6月21日、緊急事態からまん防に移行し、禁止されていた飲食店の酒類提供が午後7時まで可能になった(1グループ2人、90分までに限定)が、営業時間は依然として午後8時までだ。満足な売り上げが得られない店が多い。
今回のまん防でも、店舗の規模と売り上げの減少額に応じて、(東京都の場合)1店舗当たり52.5万〜420万円の協力金が支給されるが、大型店ではそれでも足りないと、20万円以下の罰金を払っても、営業する店がある。2〜3カ月後の協力金より目先の収入が重要で、もう会社が回せないほど追い込まれているところもある。
歌舞伎町商店街振興組合では「ここに来て時短要請を無視して深夜営業、24時間営業をする店が増えた。遅くまで開いている店が繁盛している」と指摘する。さらには、「大久保、新大久保の飲食店は、歌舞伎町の比でなく夜遅くまでにぎわっている店が多い」と声を潜める。
東京都からの時短命令に対して、自社を狙い撃ちにし、法の下の平等に反する憲法違反などとして提訴しているグローバルダイニングでは、商業施設に入る店以外は、基本、通常営業に戻している。
同社長谷川耕三社長は、5月10日に小池百合子東京都知事に宛てた「弁明及び意見について」において、東京都は緊急事態にあるのかと疑問を呈していた。実際、5つの指標のうち、医療の逼迫(ひっぱく)具合など3つの指標は緊急事態のレベルになかった。
さて、NHKが6月23日に発表した「病床使用率 全都道府県グラフ」によれば、全国で新型コロナ対応のベッド数20%、重症者対応のベッド数19%が使われているにすぎない。
重症化対応ベッド数使用率を都道府県別に見ると、緊急事態の沖縄県70%は確かに多い。
次に多い東京都と愛知県が29%となっており、どこもまだ余裕がある。
大規模小売店はどうか。百貨店では、伊勢丹新宿店は一部レストランなどを除き通常営業に戻している。家電量販店もヨドバシカメラは基本、通常営業だ。東京都では、生活必需品を除いて午後8時までの時短を求めているが、小売店は飲食店と違って罰則がない。何を指して生活必需品とするのか基準もあいまいで、売り上げの減少に対してもう我慢できないようだ。
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