連載
“鉄道観光ビジネス”再起動、失われた2年間をどう取り戻すのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/10 ページ)
沖縄県を除く緊急事態宣言解除、新型コロナウイルスワクチン接種の進ちょくを見越して、鉄道旅行ビジネスが活気づいてきた。冷え切った観光需要を「元通り」にするには、「元通り」の商品展開では足りない。そこで「工場夜景ツアー」「観光急行列車」「おみやげ品割引」など、注目の事例を紹介しつつ、今後の新施策に期待したい。
ビジネス需要も観光需要も落ち込む中で、ビジネス需要の早期回復は期待できない。そこで旅行需要の拡大策「ずらし旅」を作った。旅行会社と連携し、観光宿泊施設と観光体験施設割引を組み込んだパッケージ商品を売る。出張族に向けてビジネスホテルを組み合わせたダイナミックパッケージの観光施設版だ。
JR東海ツアーズの旅行商品は、20年8月から2カ月間で8倍も売れたという。21年3月から7月末までゲームソフト「信長の野望・新生」「戦国無双5」のタイアップ企画も始まった。良い意味でJR東海らしくない。
とにかく、「ずらし旅」の名前がうまい。いつもの混雑する時間帯を避けて「密をずらし」というけれど、当時の東海道新幹線はどの時間帯もガラ空きで、実質的に常にズレた状態だった。それを逆手に取り「ずらし旅はお得で賢い」というイメージ作りに成功した。
「ずらし旅」のブランド力があるからこその「冷やし旅」。名前とは裏腹に担当スタッフの熱さが伝わってくる。今後「○○し旅」シリーズとして定番化するかもしれない。
大ヒットキャンペーンのずらし旅は公式キャラクター「ずらしmado(マドゥ)」も誕生。キャラクターボイスは声優の山下大輝さん。大ヒットアニメ『鬼滅の刃』では主人公を助ける珠代に仕える愈史郎役を演じた(出典:JR東海、ずらし旅キャラクター「ずらしmado(マドゥ)」)
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