ジョブ型人事で才能を開花 従来と異なる「ヒトの育て方」の成功ポイント:職能型との違い(1/2 ページ)
話題のジョブ型人事制度と、伝統的な日本型人材マネジメントである職能型人事制度の大きな違いは、ヒトの育て方だろう。ジョブ型の場合、ヒトの育て方の基本思想は「厳しい競争環境を通じてヒトを鍛えていく」ということだ。成功のポイントを解説する。
旧来の職能型とジョブ型の違い
程度の違いはあるものの、多くの日本企業が任せる仕事によって処遇が決まるジョブ型人事制度に関心を寄せている。話題となっている給与のランク付け(ジョブグレード制)や雇用の在り方以上に旧来の職能型人事制度とジョブ型人事制度の違いが鮮明なのは、ヒトの育て方だろう(図表1)。
伝統的な日本型人材マネジメントである職能型人事制度で、キャリア形成はほぼ会社に委ねられている。異動・配置転換は会社の指示によって行われ、さまざまな仕事をヒトに経験させ、会社の価値観、組織風土を染み込ませ、中長期的な視点で職務遂行能力の開発を図り、会社固有のゼネラリストに育成していく。自社独自の企業文化への理解や暗黙知が重視される前提なので、さまざまな職務経験をさまざまな上司の下でOJTと階層別研修を中心に行い、それを後進へと伝承させることで安定的な組織運営を可能としてきた。
一方、ジョブ型人事制度でキャリア形成は個人の責任に帰属する。新卒一括採用がスタートという発想ではないので、基本はある職種・業務の専門家候補としてのキャリア形成となる。例えば社内の経理でキャリアをスタートさせるとすれば経理部門内での担当業務の幅を少しずつ広げていき、やがて資金調達、コーポレートファイナンス、あるいは本社、支社、海外拠点での経営・財務に自ら手を挙げてチャレンジし、キャリアアップする形となる。
専門領域を広げ、リスキリングするために異なる職種にチャレンジすることもあるが、ジョブ型人事制度では報酬が減少することもあり得る。もちろん会社はリスキリングのための社内外の研修制度を充実させておくことが求められる。
極論をいうと「厳しい競争環境を通じてヒトを鍛えていく」ことがジョブ型人事のヒトの育て方の基本思想だ(図表2)。
自らの専門性を社内外にあるリスキリングの研修制度を活用し、社内公募制度があればそれに手を挙げて自らを鍛え、リスクを取りながら上位の仕事にチャレンジしていくことで自律的にキャリアをデザインする。ジョブ型人事制度では、OJT中心の職能型人事制度における人材育成と比較して、自らの意思さえあれば、チャレンジに対する機会獲得の範囲が格段に広いのである。
リスキリングを成功させるポイント
関連記事
- NEC、りそな、パーソル──“息切れしない”企業改革、大手3社に共通する「ヒト投資」
働き方改革、リモートワーク、DX化、インクルージョン&ダイバーシティ――変化の速い事業環境の中で、企業が取り組むべき課題は山積状態。疲弊して歩みを止めることなく、会社の活力を生み出すためにはどうすればいいのか。少なくない企業が、「ヒト投資」という答えに活路を見い出している。大手3社に、その施策を聞いた。 - ジョブ型とメンバーシップ型を融合、ブリヂストンの人事制度は“日本型のスタンダード”になるか
ブリヂストンが中期事業計画の一環で、人事制度を改革している。その中で注目したいポイントが2つある。1つは、組織の階層構造のシンプル化。もう1つは、ジョブ型とメンバーシップ型を組み合わせた人事制度の導入だ。 - 「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのか
「来年度の目標は、残業時間ゼロ」──社長の突然の宣言は、まさに寝耳に水の出来事だった。準備期間は1カ月。取り組み方は、各部門に任せられた。現場はどう対応したのか? - 「リスキリング」とは何か 有能な人材が欲しいなら、必要不可欠
新しいスキル・能力・知識を身につけていくことを指す「リスキリング」。これまでも「学び・学習(学び直し)」や「人材教育・人材育成」などがあったが、このタイミングでリスキリングに注目が集まるのはなぜか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.