灯台下暗し? 「目指せDX」と息巻く総務が陥りがちな、大きな勘違い:「総務」から会社を変える(1/3 ページ)
DXの機運が高まり、総務の現場でもテクノロジー・ツールの活用が進む。もちろん、これまでにない効率化が進むのはよいことだが、その裏には危険な誤りもあると筆者は指摘する。
「何でもよいので、DXができるテクノロジー・ツールを教えてほしい」――筆者のもとに、こんな問い合わせが飛び込んできた。この質問に違和感を覚えたのは、筆者だけだろうか。
果たして、テクノロジー・ツールを導入すればそれがそのままDXとなるのだろうか。この質問をしてきた方は、テクノロジー・ツールを使うことがDXと考えているようだが、これは正解なのだろうか……。
「手段の目的化」を避ける
コロナ禍を受けて、テクノロジー・ツールの活用が進み出した。国もいよいよ重い腰を上げて脱ハンコの推進や、デジタル庁の創設に尽力しており、その動きが慌ただしい。今や世は「DX時代」といっても過言ではないだろう。
このDXは、「デジタル・トランスフォーメーション」というように、「デジタル」が「トランスフォーメーション」より先にあるがゆえに、デジタル・ツールの活用が、デジタル・トランスフォーメーションである、という理解がまん延しているように感じる。
そしてよくいわれる、わが国の悪弊、つまり「手段の目的化」がここでも起こりつつあると筆者は考えている。冒頭の質問のような、テクノロジー・ツールを導入すれぱ、デジタル・トランスフォーメーションであるという理解がその代表例だ。
そもそも、DXの定義とは、顧客接点のデジタル化による、ビジネスモデルの変換、あるいは、最高の顧客体験を作ることだと筆者は理解している。これはつまり、単純にテクノロジー・ツールを導入し効率化を実現するだけではなく、もっと本質的に、実現したい世界観を構想し、それを実現するためにテクノロジー・ツールを使うことである。
DXに至るための、2つの通過点
そもそもDXのためには、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」という土台作りが企業内で進んでいる状態が必要である。
デジタイゼーションとは、まず全ての前提として必要な、紙などのアナログな状態で散らばっている情報を、デジタル情報に変換することを指す。このデジタイゼーションは、コロナ禍により大きく前進しているようだ。アナログ情報が存在する限り、そもそもリモートワークを実現できないので当然ともいえる。
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