定期代が上がる!? 鉄道の“変動運賃制度”が検討開始、利用者負担は:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
鉄道で「変動運賃制度」の検討が開始された。そもそも、通勤通学定期券によるボリュームディスカウントは必要だったのか。鉄道会社の費用と収益のバランスが、コロナ禍による乗客減少で崩れてしまったいま、改めて考えてみたい。
都市の鉄道も救済したい。ただし予算はない
いままで国は、過疎によって乗客が減った地方鉄道に対して支援を行ってきた。鉄道にこだわらず、バスやデマンドタクシーを使った持続的な交通体系維持も示唆した。ところが、面倒を見なくても自活できる大都市の鉄道まで経営危機に陥った。大量輸送手段の鉄道は都市の要であり、道路交通では代替できない。
支援策がなければ鉄道が死ぬ。都市が死ぬ。国が滅びる。そこで浮上した政策が「変動運賃を認める」というものだ。鉄道運賃の規制を緩和し、鉄道事業者の値上げを認める。明治以来の鉄道施策を転換する覚悟を決めた。
なぜなら、通勤客の減少は国の感染対策の結果だから。これは“官製不況”だ。国が責任を取らなくてはいけない。しかし、大規模な都市鉄道に対して、経営安定のための補助金は出せない。そんな予算はない。だから、メンツを捨てて制度をいじり、鉄道事業者の自助を促そうと考えた。JR東日本もJR西日本も、値上げさせてほしいと言っている。
そこで国土交通省は「大都市鉄道等の混雑緩和策の検討(ダイナミックプライシング等)」を盛り込んだ「第2次交通政策基本計画」を策定し、2021年5月28日に閣議決定された。2025年度までに議論していくことになる。
ダイナミックプライシングが実施されると、通勤時間帯の運賃は定期券だけではなく、単発のIC乗車券決済でも値上げになる。その代わりに、ピーク時間帯の運賃を下げるよう鉄道事業者に求めていくだろう。
いままで朝7時台、8時台に集中した通勤客が、6時台や9時台、10時台まで分散すれば、鉄道事業者は列車の編成を短くできて、運行本数も減らせる。つまりコストを下げられる。鉄道事業者の業績回復のためには、25年までの結論まで待てない。早急に決定してほしい。
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