定期代が上がる!? 鉄道の“変動運賃制度”が検討開始、利用者負担は:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
鉄道で「変動運賃制度」の検討が開始された。そもそも、通勤通学定期券によるボリュームディスカウントは必要だったのか。鉄道会社の費用と収益のバランスが、コロナ禍による乗客減少で崩れてしまったいま、改めて考えてみたい。
鉄道は地域独占企業として規制されてきた
鉄道の運賃は、鉄道事業者が任意で決められない。「上限運賃制度」という規制があり、国の認可を受ける必要がある。「距離に応じて、最大でこれだけの運賃を定めたい」と国に届け出て認可を受ける制度だ。なぜ鉄道会社にこんなしばりがあるかといえば、鉄道事業は公共事業かつ地域独占企業だから。
鉄道建設は莫大な資金が必要だ。出資者からお金を集めても、実際に開業できなければ詐欺だ。土地を確保して放り出せば地域が荒廃する。つまり、規模が大きいだけに事業の失敗は許されない。だからこそ発起人と事業計画を厳正に審査して「免許」を与えた。鉄道免許は、その地域の鉄道事業を独占的に認める。これは酒や塩の専売制度にも似た施策だ。
事業を認めたからには健全に運営されなくてはいけない。競合他社の平行建設を認めると、過当な運賃競争が起きて、安全への投資を怠る恐れもある。だから無用の競争は避けるべきだ。したがって、国策による鉄道建設が決まっている地域には免許が与えられなかった。
鉄道免許制度は00年に鉄道事業法が改正されるまで続いた。法改正以降の鉄道事業は免許制から許可制に緩和され、届け出れば路線の建設と廃止が可能になった。もっとも、すでに大都市の鉄道網は整い、競争目的の新規参入の余地はなかった。この改正はむしろ、赤字路線の廃止手続きを緩和するためといえた。
この改正で同時に作られた制度が「上限運賃制度」だ。それまで鉄道の運賃については、変更の都度、国の審査、認可が必要だった。鉄道は独占企業だったから、放置すれば独善的に値上げする。これを防ぐために監督されていた。それを緩和し、鉄道事業者の裁量を増やした。
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