電動キックボードは日本の交通に馴染むのか:高根英幸 「クルマのミライ」(2/4 ページ)
電動キックボードの実証実験が、全国の何カ所かの都市で始まっている。電動キックボード自体は、保安部品を装備して登録しヘルメットを被れば、原付きバイクと同じように最高速度時速30キロで車道の左側を走行することができるものだ。
事故が起こり始めている現在、歯止めは効くのか
事実、電動キックボード自体、街で見けるようになって早々、全国で交通事故が起こり始めている。それも大部分は運転者の交通違反が原因だ。特に大阪で起きた、二人乗りで歩道を走って歩行者をひいて首を骨折させるほどの大怪我を負わせ上に逃走した、という事故は、怒りや驚きを超えてあれさえするほどで、身勝手極まりない犯行(法を犯しているので、敢えてこう書かせてもらう)といえる。
そもそもモラルのない人がこういった乗り物(フル電動自転車なども同様だ)を購入して、気軽に乗り回せる環境にあることが、事故を生む背景にある。しかし遊具として売っている以上は、販売を規制することは難しい。ちなみに通常のキックボードもスケートボードも、幼児用のペダル無し自転車も全て遊具であり、公道での利用は禁止(まったく人の往来がないところなら別だが)されている。
しかし子供や若者を中心に遊具で公道を走る姿を見かけることが最近は珍しくない。遊具での走行を禁止しているのは迷惑だからではなく、運転者自身が危険な目に遭うからだ。前後にブレーキが付いていない乗り物は、急には止まれないため、周囲の交通(歩行者も含む)との衝突を避ける能力が低い。つまり被害者にも加害者にもなり得るもので、危険なため規制されているのである。
そんな危険性すら理解せず、自分や子供たちをそんな乗り物と共に公道へと放ってしまう、モラルも危機管理能力も希薄な人が、電動キックボードという新たなオモチャを見つけ、便利だからと公道で使い、面倒だからと登録やヘルメットも被らないで走り回っている。
実証実験はシェアリングサービスだから、キチンとルールを知った上で利用することが前提となっているから問題ないと思われるだろう。だが、その周辺には、良からぬ影響を与えることも想像してほしい。
モラルや危機管理能力が希薄な人々は、断片的に情報をつかんで、自分の都合の良いように解釈する。そうでなくても法律やルールを順守する意識が薄いので、電動キックボードを実証実験で許された条件を超えて、勝手に乗り回す。実際にそれが起こっている。
そういったリスクを自治体は想像できないのだろうか。単に海外では普及している便利でエコな乗り物を真っ先に取り入れることで、地域の活性化に向けた取り組みに積極的な姿勢であることをアピールできる、という狙いが透けて見える。性善説をベースに物事を考えるのは、これだけ市民の声や動きが表面化した世の中では、あまりにも稚拙だということに気付くべきだろう。
セグウェイが日本で普及しなかったのも、歩道の整備が不十分で、たとえ法を改正しても歩行者と共存できるエリアが非常に限られることが一番の理由ではないか。
低速車両は歩道を走るべきであり、しかも歩行者と共存できるのは自転車くらいのものだ(道交法上は自転車も車道を走る乗り物となっている)。電動キックボードは低速で走ると安定性が低く、さらに広く平らな歩道は非常に少ない。常に外乱による不安定さを運転者がカバーしてバランスを取りながら走るのは、遊具として生まれた宿命なのである。
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