爆増した3万ブース超のカプセルホテル “ブーム終焉”の理由はコロナ禍だけじゃなかった:瀧澤信秋「ホテルの深層」(2/5 ページ)
近年、訪日外国人旅行者の激増により宿泊施設不足が露呈、数多くのホテルなどが誕生した。施設数で群を抜いていたカテゴリーが「簡易宿所」といわれる施設で、その代表格が「カプセルホテル」や「ホステル」と呼ばれる宿泊施設だ。
そもそも「カプセルホテル」って何?
カプセルホテル業態は、簡易宿所全体の増加率のデータから見てもまさにインバウンドブームとともに激増したカテゴリーであることが分かる。宿泊施設全体の業態別増減率を12年と17年で比較してみると「旅館」15.8%減、 「ホテル」5.8%増、「簡易宿所」29.4%増と、カプセルホテルも含まれる簡易宿所の増加率の高さが目立つ(厚生労働省 衛生行政報告例)。
シティーホテル、ビジネスホテル、旅館、レジャー(ラブ)ホテルなど業態別に宿泊施設事業者を取りまとめる業界団体はあるものの、実は簡易宿所・カプセルホテル事業者を取りまとめる全国規模の団体はない。そのため、カプセルホテルの実態をデータ上で把握するのは難しいとされる。そもそもカプセルホテルの定義というのがなかなか難しい。
少々話は逸れるが、筆者は14年に“365日365ホテル”というミッションを実行、1年間で372の宿泊施設へチェックインした。その際に、東京都内の全カプセルホテルへもチェックインした。その過程があって「カプセルホテルとはなんぞや」という疑問を持つようになったのだ。
いわゆるカプセルユニットを用いた施設がカプセルホテルというのは明快であるが、形状は二段式のカプセルホテル風であるものの、木枠で組んだスペースや、本棚に囲まれた枠で区切られた就寝スペースを持つ宿泊施設も時に“カプセルホテル”を標ぼうするケースもあった。
イメージが消費者にフックするという部分では、カプセルホテルは実に秀逸なワードではあるものの、その定義を鑑み以後筆者は“カプセルユニットを用いた宿泊施設”をカプセルホテルと位置付けて情報発信してきた。すなわち専門メーカーにより研究され、製作・販売されているカプセルユニットを用いた施設のこと。メーカーに話を聞くと、快適性や機能性はもちろん、安全性の担保などさまざまな工夫を施しているようだ。
いずれにしても“カプセルホテルを把握するのは難しい”と前述したのはこのような意味合いにおいてである。
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