爆増した3万ブース超のカプセルホテル “ブーム終焉”の理由はコロナ禍だけじゃなかった:瀧澤信秋「ホテルの深層」(3/5 ページ)
近年、訪日外国人旅行者の激増により宿泊施設不足が露呈、数多くのホテルなどが誕生した。施設数で群を抜いていたカテゴリーが「簡易宿所」といわれる施設で、その代表格が「カプセルホテル」や「ホステル」と呼ばれる宿泊施設だ。
旧来型とは何が違う「進化型カプセルホテル」
コロナ禍前、19年8月時点で筆者が調査したところ、カプセルホテルは全国で約300軒(ユニットブース数ベースで3万2000超)確認できた。うち東京都が100軒ほどと3分の1を占めていた。
17年以降もその傾向は続き、例えば東京都心のカプセルホテルは、17年から19年8月まででおおむね2割ほど増えた。訪日外国人旅行者の激増を起因とするホテル活況で、さまざまな業界からのカプセルホテル事業参入も増加の一途をたどった。
増加したカプセルホテルで特徴的だったのが、筆者の造語で恐縮であるが「進化型カプセルホテル」といわれるスタイルだ。旧来のカプセルホテルにないデザインやサービスなどに気遣った施設が続々と誕生したのだ。カプセルホテルといえば、サラリーマンを代表とする男性専用施設という時代が長かったが、進化型で特徴的なのは“女性用”の施設も増加したことだった。
女性専用エリアを設ける施設はもとより全館女性専用といった施設まで誕生した。旅行の多様化、移動手段の簡便化は女性の一人旅需要も喚起、女性が利用できるカプセルホテルのニーズは高まったことに起因する。
女性専用の施設はパステルカラーを基調とした内外装を施し、洗面ブースには基礎化粧品などのコスメ類やヘアアイロンなどを設置。女性目線の気遣いにあふれている点も特色として挙げられる。
進化型ユニットの形態もバラエティに富む。本来、カプセルユニットといえば上下2段・正方形の入り口・奥に長い就寝スペースが並ぶ光景をイメージするが、横から出入りできるタイプも増えた。
こうした形状は以前から存在していたものの、進化型でよりフォーカスされたスタイルだ。横長の側面から出入りできるので楽な上、進化系では大きなテレビを枕と対の壁面に設置することも可能。上下交互に配置すればプライベート空間を確保できるのもこのタイプの特徴である。また、カプセルホテルとは異なる形態でよりも広く、直立できる空間を確保するキャビンタイプも誕生した。
一方で、トラディショナルスタイルともいえる施設も根強い人気がある。進化型に対して旧態型とも表せる施設であるが、進化型に比べると何より安価であることが魅力だ。進化型が4000〜5000円というイメージに対して旧態型は2000〜3000円、中には1000円台といった施設もある。デザイン性やサービスなどは進化型に劣るものの、低料金の強みを生かした利用形態にマッチしているのも特長だ。
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