爆増した3万ブース超のカプセルホテル “ブーム終焉”の理由はコロナ禍だけじゃなかった:瀧澤信秋「ホテルの深層」(4/5 ページ)
近年、訪日外国人旅行者の激増により宿泊施設不足が露呈、数多くのホテルなどが誕生した。施設数で群を抜いていたカテゴリーが「簡易宿所」といわれる施設で、その代表格が「カプセルホテル」や「ホステル」と呼ばれる宿泊施設だ。
コロナ禍前から「客足減少」その原因は?
そんなカプセルホテル業界であったが、実際には18年の終わりごろから供給過多が指摘されるようになった。筆者がそれを実感したのが、カプセルホテルの事業者から「一度、施設を見ていただきたい」との取材オファーが増えたことだった。
よくよく話を聞くと「開業したものの客足が伸びず悩んでいる」「予約数の減少に歯止めがかからない」というのだ。取材と共に改善点などアドバイスを請えればとの申し出であるが、一時の勢いがなくなっているというカプセルホテル事業者の声は増加していた。
その原因としてビジネスホテルとの価格帯競合があった。高級ホテルが高いニーズを保つ中で、一般的なビジネスホテルの料金はインバウンド大活況のころに比べると、相当な下落傾向にあった。
もちろん繁閑差や変動はあるが、最低価格が1万円程度だったビジネスホテルの実勢料金は5000〜6000円、中には4000円台という例も見られるようになった。新しくキレイなビジネスホテルの料金も値頃感が出てきた。まさに進化型カプセルホテルと競合する価格帯だ。
進化型の台頭でカプセルホテルの認知度は格段にアップしたが、そうした存在感の高まりの裏にはインバウンド需要の高まりなどを起因とした、ビジネスホテル料金の高騰があったのだ。ゆえに進化型カプセルホテルは、ビジネスホテルの料金変動の余波をもろに被った。
進化型カプセルホテルは「清潔感が乏しい旧来型カプセルホテルは選択肢に入らないが、高騰したビジネスホテルには宿泊できない」というニーズをうまく取り込んできた。低価格帯でいえば、法律的には宿泊施設ではないが“個室鍵付き”といったネットカフェやレンタルルームが勢力を増してきたことも、カプセルホテルにとって逆風となった。
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