高速道路の最高速度が120キロなのに、それ以上にクルマのスピードが出る理由:高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)
国産車は取り決めで時速180キロでスピードリミッターが働くようになっている。しかし最近引き上げられたとはいえ、それでも日本の高速道路の最高速度は時速120キロが上限だ。どうしてスピードリミッターの作動は180キロなのだろうか? そう思うドライバーは少なくないようだ。
180キロのスピードリミッターがないクルマ
もちろん発売後にもさまざまな改良のためにクルマをテストする機会もある。日本のモータースポーツの歴史もそこそこ長く、サーキット走行を楽しむクルマ好きも少なくない。エンジン性能を十分に生かせる180キロまで出せることはさまざまな面でプラスに働いたハズだ。
そして最近の国産車の中には、スピードリミッターが180キロで作動しない車種も存在する。日産GT-Rは、サーキットや任意の場所でスピードリミッターを解除できるようになっているし、ホンダNSXにも同様の機能がある。またトヨタのGRスープラは、オーストリアのマグナ・シュタイヤー製で構造的にはBMW車なので、スピードリミッターが備わっていないし、逆にヤリスは170キロでスピードリミッターが作動するようになっているなど、車種により最高速度の制御を使い分けている。
それにもしスピードリミッターが制限速度の上限である120キロで作動すると、不都合なことも起こり得る。というのも交通違反で徴収される反則金や罰金は国庫に納められるのだが、毎年の国家予算にそれらはあらかじめ組み込まれているからだ。
前年度、前々年度の収入から見込まれた金額が計上されており、令和2年度では543億円を超える金額が計上されていた。しかもこれは反則金だけの金額であり、通称赤キップと呼ばれる重大な交通違反では行政処分(運転免許の停止や取り消し)と共に刑事罰として課せられる罰金は含まれていない。
スピードリミッターの上限を引き下げることによってこの速度違反も消滅するとなると、国家としての収入はその分減少することになる。ただでさえ赤字国債をバンバン発行している状態なのに、さらに収入が減るとなると別の財源が必要になるか、速度超過以外の交通違反の反則金が値上げされることになるのだろうか。
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