2015年7月27日以前の記事
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レアメタル戦争の背景 EVの行く手に待ち受ける試練(中編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

コバルトの問題が難問過ぎるので、今注目を集めているのが、従来のハイコバルト系リチウムイオン電池に代わる方式だ。最も早く話題になったのがリン酸鉄電池である。ついでナトリウム電池、そしてニッケル水素のバイポーラ型電池。長らく次期エースと目されている全固体電池もある。

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レアメタル戦争の背景

 さて、次は原材料の話だ。原材料といえばそれはレアメタルなのだが「いやレアメタルって具体的に何?」という声もあるので、資源エネルギー庁のページをリンクしておく。


バッテリーで重要なレアメタル、リチウム、コバルト、ニッケルの産出国(資源エネルギー庁サイトより。JOGMEC, Industrial Minerals, USGS等により経済産業省が作成)

 資源エネルギー庁では、6種のレアメタルを挙げているが、今後のバッテリー原材料の供給を考えた時、特に問題となるのが、リチウム、コバルト、ニッケルの3つだ。「リン酸鉄バッテリーでコバルト不足は解決した」と言いたくて待ち構えている人には、話はそう簡単ではないことを説明する。本稿の最後で概要を、次回で詳細をという流れになると思う。

 さて、現状レアメタルの多くは中国によって寡占されている。1985年頃にトウ小平が唱えた「先富論」をきっかけに、中国共産党は戦略的かつグローバルにレアメタルの産地を押さえにかかり、その上で戦略的ダンピングを仕掛けて、他国の鉱山経営を圧迫する方策に出た。世界各国のレアメタル鉱山はこのダンピングに負けて、多くが閉山に追い込まれている。

 この戦略の仕上げのステージが、2015年に発表された「中国製造2025」で、製造業の重点10項目について覇権を握ることを目的としている。その中に「省エネ・新エネ自動車」が含まれているのだ。

 「中国製造2025」における中国共産党の戦略は大きく分けて2つある。1つは巨額の補助金によって、中国系資本の鉱業の経営を支え、販売利益に頼らないダンピングを可能にした。もう1つは、環境負荷を無視した採掘方法をどんどん推し進めた点にある。

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