エースの「背中が蒸れないリュック」は、なぜ売れているのか:週末に「へえ」な話(2/3 ページ)
暑い夏。リュックを背負って「汗ばむなあ」「蒸せる」と感じたことがある人も多いのでは。こうした問題を解決するために、バッグメーカーのエースは「蒸れないリュック」を開発した。どういった機能が搭載されているのかというと……。
構造を見直し、軽量化
初代のラパックエアVを開発するにあたって、エース社はどのようなことに注目したのだろうか。リュックを背負うと、背中が蒸れる。この問題を解決するために、「エアベンチレーション」機能を採用した。この機能はアウトドアのリュックでよく使われていて、リュックの背面を弓なりに湾曲させて、本体と背中の間に空間を設ける構造である。
が、しかしである。ここで同社の“伝統”が邪魔をするのだ。「カバンは頑丈でなければいけない」――。もちろん、この考え方が間違っているわけではない。これまで丈夫なカバンをたくさんつくり続けてきて、お客から「エースのカバンは頑丈だよね」といった声があった。ただ、そうした意見を聞いていくうちに、「頑丈=正義」という考えが凝り固まって、企画が進んでいったのだ。
フレームの部分に棒材や板材といった素材を使うことで、重さがどんどん増していく。企画担当者も「ちょっと重いかも」と不安を感じたものの、「頑丈=正義」を信じて、重さ1230グラム(12リットル)の商品を世に出したのだ。
もう1つ、課題があった。エアベンチレーションは背面を大きなカーブを描くように内側に湾曲させているので、PCや書類といったビジネスツールの収納にはやや非効率な構造をしていたのだ。仕事で使うプレゼンの資料を取り出そうと思っても、ひっかかってうまく取り出せないことも。冒頭で紹介したアンケート結果でも、リュックで不満を感じていることの3位は「背中が汗ばむ」だったが、1位は「モノを出し入れしにくい」(38.1%)である。
「重さ」「出し入れ」の問題を解決するために、開発担当者はどのような手を打ったのだろうか。棒材や板材といった重い素材ではなく、ピアノ線に注目する。ピアノ線などを変更したことで、同じ容量のモノと比べ320グラムの軽量化に成功したのだ。
また、ピアノ線を使うことで、湾曲していた構造を見直すことに。弓なりになっていたのでモノの出し入れがしにくかったわけだが、枠の四つ角に曲げ加工を施し、本体背面が平らでありながら空間を確保することにしたのだ。結果、PCや書類などの出し入れがしにくいといった問題も解決した。
初代モデルの構造を見直し、軽量化にも取り組んだ。結果、どういった効果が得られたのだろうか。熱を発生するマネキンを使って、どのくらい放熱されているのか調査したところ、背中がフラットのリュックに比べ、ラパックエアV2は約23%も向上したのだ(15分間リュックを装着した直後の背部の放熱性を調査)。
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