プロダクトアウトの罠にハマった「象印」のリカバリー戦略:家電メーカー進化論(3/8 ページ)
電気炊飯器市場でトップシェアを誇る象印マホービンは、2018年に100周年を迎えた。高級炊飯器のヒットとインバウンド需要に押され、10年ごろから右肩上がりで売り上げを伸ばしたが、16年をピークに減少。そこへコロナ禍が発生した。この長引く苦境をどう乗り越えるのか。取締役の宇和政男氏に話を聞いた。
炊飯器のシェアは1位でも、高級炊飯器では遅れを取っていた象印。その原因を、口コミサイトやSNSによる情報シェアの時代に、製品全体のバランスを重視した「総合点で評価されるものづくり」が合わなくなったためだと分析した。そこで、総合力ではなく一点特化の尖った製品を作ろうと開発したのが、美味しいご飯が炊ける炊飯器『極め羽釜』だった。
「かまどで炊いたごはん」の食感を追求した極め羽釜は大ヒットした。発売から3カ月で年間販売計画の50%を売り上げ、炊飯器のフラグシップモデルとして存在感を発揮していく。しかしこの成功体験が、この先に始まる不振の原因の1つだったと宇和氏は語る。
「極め羽釜の成功によって、当社のマインドが変わってしまったと思っています。良いものを作れば少し高価でも売れる、デザインや機能に多少の偏りがあっても大丈夫という、プロダクトアウトなマインドに変化していったのです」(宇和氏)
極め羽釜が成功したように、プロダクトアウトによるものづくりには一点集中した尖った製品を作れるメリットがある。しかし、やりすぎると作り手の過信が生まれ、消費者のニーズとかい離してしまう。象印は知らぬうちに、そのスパイラルにはまっていった。
「極め羽釜を出した10年から数年間は、業績が大変良くなりました。その後発売した、ホースやマットがないふとん乾燥機もプロダクトアウト型の製品で、他社の製品が6000〜7000円のところ、1万7000〜8000円と高い価格設定でしたがヒットしました。このころから消費者の意識とのかい離が始まって、少しずつ売り上げが減っていったように思います」(宇和氏)
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