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プロダクトアウトの罠にハマった「象印」のリカバリー戦略家電メーカー進化論(4/8 ページ)

電気炊飯器市場でトップシェアを誇る象印マホービンは、2018年に100周年を迎えた。高級炊飯器のヒットとインバウンド需要に押され、10年ごろから右肩上がりで売り上げを伸ばしたが、16年をピークに減少。そこへコロナ禍が発生した。この長引く苦境をどう乗り越えるのか。取締役の宇和政男氏に話を聞いた。

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消費者ニーズを見つめ直したブランディングとものづくり

 自社製品の長所とマーケットのズレに気付いた象印は、現在ブランディングやものづくりの指針について修正を進めている。その象徴の1つともいえるのが、19年にローンチした、調理家電系の新ブランド「STAN.(スタン)」だ。

 STAN.は、デザイン性と使いやすさを重視しながら、調理家電を新しい“暮らしの道具”として提案したシリーズだ。現在、IH炊飯器、電動ポット、コーヒーメーカー、ホットプレートの4種類をラインアップしている。デザインとクリエイティブディレクションでは、クリエイティブユニットTENTとのコラボレーションも行った。


STAN.ブランドの家電シリーズ。高いデザイン性を備えながら、シンプルな機能で価格を抑え、若い世帯にも購入しやすい製品に仕上げた

 「STAN.は、30代の夫婦二人世帯という消費者イメージにアプローチした、カスタマーインの発想で作ったシリーズです。消費者インタビューで『炊飯器のデザインがあまりにダサいのでお客さんが来るときは押入れにしまっている』という30代夫婦の声があり、それに応えるべく、デザインと機能面のバランスをとって、家の中の雰囲気を壊さない商品にしました」(宇和氏)

 これまでは全年代をターゲットにものづくりを行ってきたが、STAN.では意識的に30代の子育て世帯に向けたブランドづくりを行った。こうして生まれたSTAN.は、当初計画を上回る売れ行きとなり、中でも炊飯器は発売後、しばらく生産が追いつかないほどのヒットとなった。

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