プロダクトアウトの罠にハマった「象印」のリカバリー戦略:家電メーカー進化論(5/8 ページ)
電気炊飯器市場でトップシェアを誇る象印マホービンは、2018年に100周年を迎えた。高級炊飯器のヒットとインバウンド需要に押され、10年ごろから右肩上がりで売り上げを伸ばしたが、16年をピークに減少。そこへコロナ禍が発生した。この長引く苦境をどう乗り越えるのか。取締役の宇和政男氏に話を聞いた。
現在、象印には経営方針『BRAND INNOVATION(ブランド革新)』がある。そこからのドリルダウンとして、19年から中期経営計画「ADAPT」という3カ年計画を立てたが、コロナ禍による世界情勢の変化により一部修正され、現在21〜22年度分がPhase2として進行中だ。
ADAPT Phase2の重点取り組みに「生活者接点の強化」「新たなファン層の獲得・拡大」という項目がある。象印の企業イメージを調査したところ、若年層の認知・評価が低いという結果が出たためだ。
「中期計画では、新商品の開発や「おいしいごはん」を軸とした新規事業を生み出す垂直的拡大と、既存の商品レンジを広げ、販路を拡大する水平的拡大をテーマに掲げています。当社の経営はこの10年間保守的だったので、攻めに転じるために、商品レンジの拡大を目指した商品として、STAN.や一昨年発売した二重反転ファンを採用した空気清浄機などを開発しました」(宇和氏)
そしてもう一つの取り組みが、利用者との接点の強化だ。18年より始まった「ZOJIRUSHI オーナーサービス」では、交換部品の割引購入や、オーナー限定のイベントの参加や製品モニターなど、多くの特典が用意されている。このような取り組みにより、象印のファンを獲得するとともに、カスタマーインのものづくりにつなげる試みを行っているという。
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