「できない理由ばかり探す人」が、会社で量産されるワケ:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
会社の組織で「できない理由」ばかり語る人がいる。なぜ、彼/彼女らはできない理由ばかり述べるのか。その背景にあるのは……。
できない理由ばかり探す人
しかし、専門家の皆さんや他の医師は冷ややかである。「まあ、言いたいことは分かるけど、今すぐってのは現実的には難しいよなあ」と長尾氏を「かなりぶっ飛んだ意見を述べる医師」扱いしている。5類引き下げには、自民党本部や議員に5億円以上の政治献金を払っている日本医師会が強硬に反対しているので、恐らくこの提言もサクッとスルーされてしまうのだろう。
長尾氏の意見を「できるわけがない」と検討すらせずに否定していく人々を見て、それがようやく何か思い出した。どこの組織にも1人はいる「できない理由ばかり探す人」である。
革新的なプロジェクト、テレワーク推進などの働き方改革、長年続いた社内の「謎ルール」や「悪しき慣習」の見直しなどに取り組もうとすると、「根回しをしないとハレーションが」とか「そんなに急に変えたら現場を混乱させるだけ」なんて感じで、もっともらしい「できない理由」を次から次へと並べ立てて、「何もしない」現状維持へもっていこうとする人が、皆さんの職場にいないだろうか。
そんな「できない理由ばかり探す人」に実は筆者はかなり前から関心があった。きっかけは十数年以上前、とある企業の危機管理を手伝ったことだ。
詳細はぼやかすが、この企業は大口顧客からの指摘で製品の品質に問題があることが発覚した。顧客はこの事実を黙っていてくれるとのことだが、筆者はこの手の話は必ず漏れるので、バレる前に自分から事実の公表だけでもしておくほうが長い目で見ればダメージが少ないと進言した。
が、それはすぐに却下される。社内で圧倒的な発言力を持つ営業部門トップが猛反対したのだ。そこまで深刻な問題なのに、わざわざ進んで公表したら藪蛇(やぶへび)になる。公表して一斉に回収や謝罪行脚となると、現場にすさまじい負担がかかる。生産ラインもパンクして他部門まで悪影響を及ぼす……など、「公表できない理由」を羅列してきたのである。
しばらくして案の定というか、品質問題はリークされ、この企業はマスコミから「隠ぺい」などと叩かれたが、件の営業部門トップが責任を追及されることはなかった。それどころかすさまじい変わり身の早さで、「ウチの会社は決断に時間がかかる」と自分を棚に上げて、「社風」のせいにしていた。
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