“昭和モデル”を壊して静岡を変えたい わさび漬け大手・田丸屋本店の意思:地域経済の底力(3/4 ページ)
日本人の食生活の変化、さらには新型コロナウイルスの感染拡大によって、静岡名物の「わさび漬け」は苦境に立たされている。しかし、今こそが変革の時だと、わさび漬けのトップメーカーである田丸屋本店は前を向く。展望を望月啓行社長に聞いた。
地方こそ連携が大事
取材中、望月社長は「静岡のために」という言葉を繰り返した。静岡にこだわる理由は明快で、地場の地域資源を使って商売をさせてもらっているという感謝の念があるからだ。
「当社の最大の強みは、わさび発祥の地の静岡市にある、140年以上の歴史を持つ会社だということ。わさびという地域資源を生かしてビジネスしている以上、それに恥じないような仕事をすべきです。わさびの新しい食文化をどんどん作っていかねばなりません」
他の地方と同様、静岡も人口減少が続いている。それを食い止めるためには、産業振興が不可欠だと望月社長は考える。これはわさびにかかわる産業も同様だ。マーケットを広げなければ、わさびの作り手も増えない。増えなければ、いずれ衰退する。
そのために田丸屋本店ができるのは、結局、事業を拡大することに尽きる。わさびを使った商品を日本中、世界中で売りまくることで、静岡のわさび産業を大きくして、雇用などを生み出していく。皆が働きたいと思える魅力的な場所が静岡にあれば、若者も地元に残るかもしれない。
「静岡の人たちが、わさびを誇りにしてもらえること。それがわれわれの使命です」と、望月社長は声を大にする。
しかし、地域経済全体を活性化させるには、1社の力だけでは限界がある。静岡は水産業や農業が盛んで食品会社も多いが、それぞれが力を生かしきれていないと望月社長は指摘する。
「地方都市の強みは連携力だと思います。大都市だとプレイヤーがたくさんいて、個別にやらざるを得ないですが、地方はプレイヤーがある程度限られているし、連携もしやすいはず。ただ、その点で静岡はまだまだです」
望月社長はこう語り、地元の企業や団体などにも協力を呼びかけていくことをあらためて強調した。なお、望月社長は静岡経済同友会の地域活性化委員長も務めており、この立場からも積極的に働きかけていきたい考えだ。
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