海底資源の宝庫? 新しい島を産んだ小笠原諸島の可能性:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
8月13日に、小笠原諸島の南硫黄島近くにある海底火山「福徳岡ノ場」で直径1キロの新しい島が確認された。
豊富な海底金属資源、生かし切れるか
日本は以前から鉱物資源に乏しい国であり、電気自動車の需要が高まっているレアメタルはもとより、銅や鉛といったベースメタルの大部分も海外の鉱山に頼っている状況である。
今回発見された新島は小笠原諸島近辺の海域に出現したものであるが、ここは海底から噴出する熱水にベースメタルが豊富に含まれており、それが凝固した「海底熱水鉱床」とよばれる海底資源が多く分布するエリアでもある。
18年10月には独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構が、海底熱水鉱床から採取した鉱石から亜鉛地金の製錬に成功した。しかし、やはり陸上における採取と比較して、費用対効果に乏しく、商業化に乗り切れていないのが現状だ。仮に大規模な資源が海底に眠っていたとしても、他国から購入する方が安ければわざわざコストをかけて採取する必要もない。
その一方で、近年は資源の生産を主に担ってきた資源国が、高次産業である製錬・加工にも乗り出し、天然資源の恩恵をより自国に還元しようとする資源ナショナリズムも台頭しつつある。資源エネルギー庁は、これらの資源における自給率を高めるため、第3期海洋基本計画に基づき、技術検証に乗り出している。その結果は来年度に明らかとなるというが、そこから27年度までに民間企業主導の商業化に向けたプロジェクトが始まる。
ちなみに、日本最東端の南鳥島の排他的経済水域にはレアアースを含む粘土状の堆積物が海底に広く分布している。開発対象となる水深は5000〜6000メートルと、海底熱水鉱床よりも最大で10倍以上も深い場所まで採取の設備を届けなければならない。それだけでなく、レアアースのように供給が限られており、景気動向によっても需要が大きく変わるものは、その双方のバランスが少し崩れただけでも大幅な価格変動が発生する可能性があり、事業化する上では不確実性が高い点で課題がある。
この点について、今回発見された新島の海域に多く分布する海底熱水鉱床は、海底鉱物資源の中でも水深500〜2000メートルと比較的浅いエリアに多く分布しており、含有する金属も銅や鉛のような、需要面・供給面共に安定している金属がメインだ。海洋から有効にベースメタルを採取するノウハウが蓄積されていけば、日本近海に眠るレアアースや石油、天然ガスといった資源にも技術を転用させ、日本の資源自給率向上の見通しも立ってくるだろう。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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