アイドルフェス「@JAM」仕掛け人に聞く「思い切って捨てる」覚悟:アイドルプロデューサーの「敗北、信念、復活、成功」【前編】(3/6 ページ)
コロナで禍で奮闘しているのがポップカルチャーフェス「@JAM」の総合プロデューサーの橋元恵一さんだ。橋元さんはソニーミュージックグループに在籍し、絢香さん、ケツメイシ、山崎まさよしさんなどのビジュアルプロデュースを務めた。橋元さんが42歳まで取り組んできたビジュアルプロデュースの舞台裏を聞いた。
「さくら」はストーリーもののMVの走りだった
――「さくら」のMV制作から発売まで苦労も多かったのではないですか?
徹夜続きでほぼ寝ないで作った記憶があります。1日2時間ぐらいしか寝ていなかったかもしれません。
通常CDは、発売1カ月ほど前をめどにジャケットを作り、その前後に音源も完成するのですが、MVの撮影や制作はそこから始まるんです。楽曲が出来上がらないとMVは作れない。ですので、楽曲ができてから限られた間に、いかに早く作るか。ここが重要になります。
「さくら」の場合、2月16日が発売日だったのですが、1月に撮影し、出来上がりが1月の終わりから2月の頭でしたので、そんなに時間をかけられませんでした。
――そのような事情は一般にはあまり知られていませんね。以後の作品はどうだったのですが?
スケジュール的なことはどのアーティストにも当てはまる話しですが、ケツメイシの場合は、ストーリーもののMVの走りだったと思うので、以降もやはりストーリーもので作ることが多かったです。
例えば「旅人」(2006年)という曲では、俳優の岡田義徳さんが、彼女との別れや仕事との向き合い方を経て、自分を見直す旅に出るのがテーマでした。メンバーとの話し合いで、小説『世界の中心で、愛をさけぶ』(小学館)をヒントに、「じゃあエアーズロックに自分探しを」となれば、急きょそこからオーストラリアに行く企画を立てたりもしました。
2泊3日でオーストラリアに行って、撮影して帰ってくる。フライト、移動、宿泊、撮影などの工程をどう進めるか。そういうことを中心となってまとめていく仕事でした。撮って、帰って、戻ってからも、今度はお芝居のなかで帰ってきたシーンを撮るために関西空港を貸し切ったりと、いろいろなことをやりました。
――MVにはテーマ設定が重要な要素になるのですね。「さくら」のMVはどういうコンセプトだったのでしょうか?
まさに、切なく、淡いラブソングです。あの曲自体が過去の恋愛、大切に思っていた人と離れ離れになっても「あなたのことを思っています」というような歌詞でした。それをより具現化して可視化できるストーリーにしましょうというもので、基本的にはどのMVもそうなると思うのですが、歌詞の世界観に映像を乗せている形です。
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