連載
カプセルを大胆リノベーション! カプセルホテルの“安心お宿”がコロナ禍で打ち出す“秘策”:瀧澤信秋「ホテルの深層」(4/5 ページ)
筆者が取材を続けてきた“カプセルホテルのトップランナー”といわれる事業者にフォーカス。アフターコロナに向けても新たな境地を切り開きつつあるリアルな現場について、これまでの取材の総括も含めレポートしたい。
コワーキングスペースに定住プラン“カプセルリノベーション”
その後も度重ねて発出される緊急事態宣言。宿泊施設全体としても需要そのものが激減していったが、安心お宿が生き残りをかけたアイデアは意外にも“宿泊から離れたもの”であった。いわゆる「コワーキングスペース」としてのカプセルユニットの活用だ。
カプセルの上下を分ける棚を外してデスクを設え、カプセル外にはテーブル席も設置。“カプセルリノベーション”とも表せるだろう。コワーキングスペースのプロジェクトは、クラウドファンディングを実施し大きな反響を呼んだ。
一般のホテルでは、アパートメントホテルや長期滞在プラン、サブスクリプションといった住まうホテルが着目され、宿泊の概念が変容している。安心お宿でも定住プランが打ち出された。「カプ住」と名付け、4万円で30日間宿泊できるプランとした。従来からオールインクルーシブが特色のブランドと前述したが、含まれるサービスが驚きだ。
ごはんサービス(午前6時〜深夜0時/お茶漬け・生たまご・みそ汁付き)、フリードリンクサービス、洗濯洗剤(洗濯乾燥機の使用には別途料金発生)、タオル、充電ケーブル、マッサージチェア、雑誌、コミックなどの利用を含んでいるのだ。
従来の安心お宿のサービスがさらにブラッシュアップされている印象だ。前述したように、住居費、水道光熱費、食費も賄いつつ“月4万円で生活できてしまう”ことになる。極端な話ではあるが。
関連記事
- バブルの名残 温泉街の「大型施設」が廃墟化 鬼怒川と草津の違いと「大江戸温泉物語」の戦略
コロナ禍がもたらす温泉街への影響は甚大だが、「温泉の魅力」として考えさせられるのが“街づくり”という点だ。筆者は「施設そのもので集客できる強い宿は例外的で、温泉地の魅力自体が集客を左右する」と指摘する。 - なぜサントリーは、抹茶ラテを「伊右衛門」ではなく「クラフトボス」から発売するのか
サントリー食品インターナショナルが展開する「クラフトボス」に新たなラインアップが加わる。8月17日に発売する「抹茶ラテ」だ。 - コロナ禍でも黒字のアパホテル 常識破壊の”強さ”と悲願の10万室が生んだ“功罪”
アパホテルが2021年5月10日に創業50周年を迎えた。いまや日本を代表するホテルブランドとして圧倒的な知名度を誇る同社。コロナ禍の中、2020年11月期連結決算で黒字を確保したという発表は、ホテル評論家としても衝撃的だったと筆者は語る。 - 爆増した3万ブース超のカプセルホテル “ブーム終焉”の理由はコロナ禍だけじゃなかった
近年、訪日外国人旅行者の激増により宿泊施設不足が露呈、数多くのホテルなどが誕生した。施設数で群を抜いていたカテゴリーが「簡易宿所」といわれる施設で、その代表格が「カプセルホテル」や「ホステル」と呼ばれる宿泊施設だ。 - 寮発祥のドーミーインが「大浴場」をどんどん展開するワケ 手掛ける「和風ビジネスホテル」とは?
「宿泊施設のカテゴリーボーダーレス化」が進んでいるが、ドーミーインのサブブランド「御宿 野乃」もそのひとつだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.