日本柔道メダルラッシュに学ぶ、「努力・気合・根性」の日本企業が“オワコン”な理由:働き方の「今」を知る(3/5 ページ)
東京五輪でメダルラッシュとなった日本柔道。その裏には、過度な「努力・気合・根性」からの脱却があった。一方、日本企業はといえば……。
「不動産業界なんてどこもこんなもんだ」「えっ、あの程度でパワハラっていわれるの? (部下は)どんだけ打たれ弱いんだよ」「オレたちが若いころなんか、もっとひどいいわれ方や、鉄拳制裁も当たり前だった」――お気付きだろうか。何気無く思ったり、うっかり口に出してしまったりするこうした類の発言こそ、「ハラスメントの再生産」そのものであり、むしろ自分たちが「ブラック企業」「老害」などと呼ばれる原因となってしまっている。
「この業界では当たり前」「過去同様のハラスメントを受けてきた」「パワハラとしては大したことない」――確かに、彼らが現役時代はそうだったのかもしれないが、あくまで今は今。もう時代は変わっているのだ。いずれも、ハラスメントを正当化する理由になどならない。働き方やそれを取り巻く環境、働く人の捉え方が大きく変わったことを受け入れ、考えを変えなくてはいけないのは彼らの方だ。
働き方改革関連法成立とコロナ禍という大きなムーブメントにより、この数年で働き方にまつわる常識は大きく変化したし、現在もまさにその最中だ。組織側、管理職側が常識をアップデートしていかないと、従業員の確保や定着にも影響が及ぶ。ひいては、企業自体のレピュテーションや存続にも関わるリスクがあるくらいの優先対応事項なのである。
以下は、ほんの数年前まで「常識」「当たり前」となっていた考え方が、現在において大きく変化している事例である。読者の企業ではスムーズにアップデートできているだろうか。
「満員電車で通勤し、出社して仕事するのが当たり前」
新型コロナの感染拡大により、事務系職種を中心に「テレワークできる仕事はリモートで」が常識になりつつある。長時間の満員電車通勤は、感染リスクにつながることはもちろん、働く人の心身を疲れさせ、出社時点で相当のエネルギーが失われるというデメリットもある。
一部年配の管理職には、テレワーク=ラクをしている、サボっていると認識する層が一定割合おり、「サボっていないか監視しなくては」という考えに至るケースもあるようだが、愚の骨頂だ。仕事の成果を「結果」で測れず、いちいち「勤務態度」をおのれの目で監視しなければ管理した気にならない、自分たちのマネジメント能力の未熟さを露呈しているにすぎない。
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