日本柔道メダルラッシュに学ぶ、「努力・気合・根性」の日本企業が“オワコン”な理由:働き方の「今」を知る(5/5 ページ)
東京五輪でメダルラッシュとなった日本柔道。その裏には、過度な「努力・気合・根性」からの脱却があった。一方、日本企業はといえば……。
「飲み会でみんな打ち解けて親睦を深めるのが当たり前」
コロナ禍において飲食店が営業していなかったり、酒類提供がなされないという事情もあるが、そもそも職場でのコミュニケーションを終業時間外のプライベート時間を割かせてまかなおうとすること自体が異常であったことに気付くべきだ。「アルコールが入ることで本音で話し合えるだろう」といった指摘もあるが、アルコールを介さないと本音が出てこない段階で、普段からのコミュニケーションが失敗している。飲み会に余計なお金と時間を割く前に、まずは日常のコミュニケーションの中身や方法から見直すべきであろう。
「始業時間の30分前に出社して準備するのが当たり前」
働き方改革進展によって労働時間管理は厳格化している。逆にそうなっていなければおかしいので、厳格化した実感がない人は今の職場に疑問を抱くべきだ。
そして、昔からある「早く出社して準備すること」に価値を見いだす考え方も、この機に見直すべきである。厳密に考えれば始業前の仕事開始は「残業」扱いであり、その分の労働時間も加味して賃金計算しなければならない。早めに出社しないと仕事が回らない、などと文句を言う会社であれば、その「仕事が回るための準備時間」から始業時間と設定すればよいのだ。
努力・気合・根性の時代は終わった
さて、ここまで列挙した事項はいずれも、年配の人にとって「若いころは当たり前」だったことかもしれない。しかし、思考停止して意味のない慣習を続け、結果を伴わない行動を無理強いしてはいけないのだ。
努力、気合、根性と長時間労働で評価された時代はもう終わった。今や、限られた時間と制約条件(その中にはもちろん「人手」も含まれる)の中で成果を最大化できることが評価につながる時代なのである。
同時に、SNSで簡単に不満が拡散する時代でもある。会社に一度張られたレッテルをはがすことは難しく、パワハラで訴えられるリスクもあるだろう。時代は大きく変化したのに、会社や管理職の考えもまた変化しなければ、優秀な人から組織を去り、新たな人員確保も難しく、組織としての評判や価値を大きく下げることになりかねない。この機に根底から見直し、結果につながる行動に集中しよう。そして、仕事とともにプライベートも充実し、物心ともに幸福を感じられる環境を創り出していこうではないか。
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