人助けランキングで日本は最下位! 「他人を信用しない」と「低賃金」の関係:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
人助けに関するランキングで、日本が世界最下位に。ネット上では「日本人は冷たい」「欧米による勝手なランキングだ」といった声が出ているが、筆者の加谷氏は「結果について過剰反応するより、冷静に受け止めてうまく活用したほうがよい」という。どういうことかというと……。
最終的には低賃金の元凶にもなっている
信用できない相手と取引する場合、当然のことながらリスクが生じる。そのリスクを軽減するためには、多額の調査費用をかけて相手を調べたり、ガチガチの契約書を作成するといった作業が必要となり、時間とコストを浪費する。これを回避するためには、よく知っている相手に絞って取引するしかない。
日本では、従来から付き合いのある相手としか取引しない企業がたくさんある。系列と称して、資本関係のあるところからしか仕入れない企業も多い。なぜそうなっているのかというと、見知らぬ相手と取引するコストを無意識的に回避しているからである。人についても同じで、社内と社外を明確に区分けし、さらには正社員と非正規社員という形で、社内においても内と外を区分する傾向が顕著である。一連の行動にはまったく同じメカニズムが働いている。
では、身内とだけ取引を続けることが低コストなのかというとそうではない。
内と外を分離する、いわゆる前近代的ムラ社会においては、十分な市場原理が働かず、結局は高いコストを支払う羽目になる。人の移動も制限されるので、人材の流動化が進まず、新しい技術やビジネスモデルに対応できない。結果的に多くの日本企業は収益と賃金を犠牲にしている。
日本企業の生産性が他国に比べて著しく低く、結果として低賃金になっていることは、すでに多くの人が認識していると思うが、理由の一つとして考えられるのが、この閉鎖的な商慣行である。人助けランキングで最下位という結果は素直に受け止め、改善したほうが多くの日本人にとって有益だと思うがいかがだろうか。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。
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