4年連続の赤字だったアイドルフェス 「@JAM」の仕掛け人は、いかにして黒字化させたのか?:アイドルプロデューサーの「敗北、信念、復活、成功」【後編】(2/5 ページ)
ポップカルチャーフェス「@JAM」の総合プロデューサーを務める橋元恵一さんに、当初は赤字続きだったフェスをいかにして黒字化させたのかを聞いた。
1000万円の経費カット
――1000万円の経費カット。具体的には、どのように見直したのですか?
全体の経費を削るために、いわゆる物理的な経費削減と、リスクヘッジの二方向で考えました。
物理的な経費の節減としては、土曜日と日曜日がフェスの本番日だったとき、金曜日に別のアーティストのコンサートと共有できるものを持ち合いました。例えば、0からステージを作ると経費が多く掛かりますね。でもステージの土台や照明などの共有を打診することによって、ある程度の経費を削減できます。これは、同じ会社内で制作していたために融通が利いた部分もありました。
他にも、それまで私の思いだけでやっていたステージの数を減らすなど、可能なところはコストカットしました。
――リスクヘッジについてはどんな工夫をしましたか?
例えば自社のみでフェスをやり1000万円の赤字が出たとすると、その1000万円全額を負担しなくてはいけませんね。そこにパートナーを加えることで、リスクを軽減させることができます。もちろん儲(もう)かった場合のリターンも減りますけどね。
いろいろと検討して未来を見据えた結果、日本テレビ、キョードー東京、レコチョクという頼もしい三社を加えて委員会方式に変えました。
特に日本テレビさんが入ったことによってプロモーション効果も大きくなり、メディアだからこそ実現できる企画もできましたし、キャスティングもサポートしてくれました。結果、フェスとしてのブランディングも上がり、全体として非常にプラスになった形です。
――5年目にして大改革に取り組んだのですね。では14年からの3年間は毎年赤字で、その間には全く見直しはしなかったんですか?
もちろん見直しはしていましたが、大々的にメスを入れることはありませんでした。このフェスの目標として、フジテレビさんがやっているTOKYO IDOL FESTIVALがあって、いまだに規模も内容もかないません。TOKYO IDOL FESTIVALは格上のフェスではあるものの、同じ夏に開催し、肩を並べるフェスと見られていた@JAMなので、規模縮小はできないと感じていました。
TOKYO IDOL FESTIVALでやっていることは、最低限@JAMでもやらなくてはと。信念とか思いとか、そういうものを優先していたんだろうと思います。
――18年から見直して取り組んだ結果は?
当然のことながら物理的な経費を削り、社長からも指摘を受けていた経費を削り、これまでと同様の動員数であれば、その時点で黒字が出ることは確定していました。かつ、日本テレビさんなどのパートナーが入ってくれたおかげでプロモーション効果も大きくなり、集客も増え、リスクも抑え、フェスとしての利益は出た形になります。ただその分、利益も分配しますから、大きな利益にはなっていないものの、初めて赤字にはならなかったということです。
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