「世界一の現場力」を犠牲にする、無責任トップの罪:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
「工夫してほしいですね、現場で」──というのは、若者向けワクチン接種センターの混乱ぶりを見た小池都知事の言葉だ。現場が必要なリソースにアクセスする権利も、意思決定できる裁量権も与えることなく、現場に責任のみを押し付け犠牲にするような動きが、いたるところで起きている。そんな中、リーダーが自覚すべきこととは──?
海外に駐在している人たちが最初に痛感させられるのが、日本の「決定の遅さ」です。
何をするにも「上」にお伺いするのが日本の暗黙のルールです。それをしないで現場で問題が起こると、「聞いてない、指示してない、承知していない」のないない攻撃で、現場に責任を押し付けます。コロナ禍でも似たようなことが起きていますよよね。
なんだか書いているだけで悲しくなってきますが、頼むからリーダーにはきちんと仕事をしていただきたい。「現場」をきちんと見て、「現場の声」に耳を傾け、メンバーたちと「思い」を共有していただきたい。
首長よ! 首相よ! 頼むぜ! という言葉しか出ません。
どんなに“上”が戦略なき「三流コロナ対策」を進めようとも、現場は決して逃げられないし、言い訳できない。何人もの現場の人たちが心身を病み、戦線離脱を余儀なくされていることを決して忘れないでほしい。そして、何よりも無責任なリーダーのツケが、医療難民の「命」を危機にさらしていることを。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)がある。
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