M&Aの失敗に学べ! 今こそ経営人材の育成に舵を切るタイミング:日本企業に必要なことは(3/5 ページ)
かつて一大イベントだった日本企業のM&A。今では恒常的に行われるようになってきたが失敗も目立つ。20年近くM&Aのアドバイザーとして活躍してきた筆者は、「経営人材の育成」を重視する必要があると考えている。
失敗してしまう事例もある
しかし一方で、このような社運を賭けた大型M&Aがうまくいっていない例が多々存在する。「うまくいっていない」とは、買収時には見抜けなかった経営上の重大な瑕疵(かし)が顕在化して損失を計上したり、買収先の経営に失敗して企業価値を大きく減価させたりするような事態を指す。その結果、買収はしたものの撤退を余儀なくされたケースもある。
いずれの場合も減損計上が必要となるし、買収金額が大きければいきおい減損も巨額となり、本体の経営にも影響を及ぼす。下の表1は筆者がまとめたM&Aの代表的な失敗事例である。海外M&Aの場合、実に7割が買収後に経営、財務上で何らかの問題を抱えているといわれている。このような失敗が起こる原因は3つある。1つ目は買い方の問題、2つ目は買った後の経営の問題、そして最後はその経営を実践する人材の問題である。
M&Aが失敗する3つの理由
1つ目の買い方の問題とは、端的にいえば「高値掴みをしてしまう」ということだ。M&Aにおいて、売り手は少しでも高い価格での売却を実現するため、オークション形式にすることがほとんどである。当然、値段は上昇する傾向がある。買収の際には入念なデューデリジェンスが行われ、法務、財務、税務上の瑕疵がないかが徹底的にチェックされる。瑕疵が発見されれば、価格を減価させるべきなのだが、ライバル会社に取られたくないという恐怖心や焦りも伴い、どうしても入札価格が高くなってしまう。買い手側のアドバイザーは、本来であれば無理な買い物はやめろとアドバイスすべきだ。しかし、アドバイザーの報酬が、買収の成功と連動しているケースがほとんどなので、「やりましょう」と背中を押してしまう。かくして、本来の企業価値を大幅に超えた価格で買収が成立してしまうのだ。これを読んで、バツの悪い思いをしているM&Aアドバイザーも少なくないであろう。
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