大量出店の「やっぱりステーキ」が、今後も“独走”を続けられそうな理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)
低価格ステーキチェーンの「やっぱりステーキ」が順調に店舗数を伸ばしている。他の低価格ステーキチェーンが伸びているわけではないのに、なぜ「やっぱり」は好調なのか?
東京都心部にも初出店
今年8月には、初の東京都心部出店となる、芝大門店がオープン。試験的に、注文方法を食券から席でタブレットを使用する方式に替えた。また、ライス・サラダ・スープをテーブルオーダーに変更した。さらに、芝大門店限定で熟成肉のステーキを導入した。
「サラダバーで席を立つストレスを思い切ってなくしてみた」(同社・広報)とのことだが、想定を上回る好調な集客となっている。
食券方式だと、入口に人がたまって行列がより長くなりがちだが、タブレットでの注文だと幾分緩和される。
サラダバーの前で人が密になるのを気にしたり、人が触ったトングを触りたくなかったり、中にはうっかりマスクを外してサラダをとり分ける他の客を見て食欲がそがれる人もいたりするかもしれない。タブレットでのテーブルオーダーにすれば、そうした感染リスクへの心配は一挙に解決される。
その分、人件費はかかるが、タブレットからは追加の1品の注文が入りやすく、単価アップに効果的なことが検証されてきた。
熟成肉は、「エイジングシート」という新技術を使った「熟成アメリカンステーキ」(200グラム)を2000円で提供。オープン当初は特別価格として1500円で販売していた。肉の熟成には2週間を要するので、現状は提供数を絞っており、売り切れる日も多い。
通常の肉だと、硬いスジなどは店内で切除して提供することになるが、熟成肉だとスジまでやわらかくなるので切除する部分が少なく、フードロスの解消に寄与する。赤身も脂も味がまろやかに変化するので、メニューにバリエーションを持たせる観点から導入した。
エイジングシートとは、熟成肉などを手掛けるミートエポック(神奈川県川崎市)が、明治大学農学部の村上周一郎教授と共同で開発した特許技術。肉を熟成させる菌の胞子を付着させた布で肉を包んで、通常の熟成期間の3分の1以下で生産。熟成肉をリーズナブルにした。これまでのドライエージングの熟成肉のように表面のかびた部分の切除もほぼ必要とせず、肉の歩留まり率も高い。
芝大門店ではオフィスのランチ需要に応えるために、ステーキ弁当の販売にも注力していて、売り上げの1割をテークアウトが占める。ステーキは冷めると硬くなって味が落ちるイメージだが、やっぱりステーキでは焼き方を工夫して冷めてもおいしいと好評だという。まとめ買いも増えていて、他のお店では売り上げの15%がテークアウトとなっているところもある。
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