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SOMPOの挑戦 “管理職公募”時代に問われる「自由の両輪」河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)

SOMPOホールディングスが22年4月から、60ある全ての課長職を公募制にすると発表し、話題になっている。変化の激しい時代の中で、「自分から手を挙げて挑戦すること」はとても大事だ。しかし同時に、経営者が目を向けるべきものがある。

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 事務系の人たちだって、営業職の人たちだって、長く会社に関わり続けることで、新しくて、強いものを生み出し、会社を支える顧客を獲得していきます。

 顧客ロイヤリティー研究の第一人者フレデリック・ライクヘルドも、自著『The Loyalty Effect』(邦題:『顧客ロイヤリティのマネジメント』)の中で、顧客との間に確固たるリレーションシップを築くには、それ相当の時間がかかるとし、「ロイヤリティーの高い顧客を確保するためには、企業に長年勤め、同じ仕事を続けている社員の存在が必要である」と指摘しています。

 本田宗一郎氏は、世界各地の工場を作業着で訪れ、食堂で冷め切った食事を出されると「こんなメシを従業員に食わせて、いい仕事ができると思っているのか!」と料理長にカミナリを落としました。さらに当時の工場で主流だった昼夜2交代制を「昼間やって、翌週に真夜中に仕事して、身体を壊したらどうするんだ!」として廃止、日本で初めて連続2交代制を導入しました。

 技術者だった本田氏は、続けること、繰り返すことの大切さを分かっていたからこそ、ものづくりの環境にこだわった。「環境が良くなかったら、働く意欲も落ちる。汚い工場からいい製品は生まれない」というこだわりがあったからこそ、そこで働く人は繰り返し続け、世界のホンダの技術が生まれたのです。

 続ける力、繰り返す力は、数字にできない「見えない力」です。

 変化の激しい社会で、新しいチャレンジを評価することは重要です。しかし同時に、こうした目に見えない力に会社は支えられている。このことを、経営者には忘れでないでほしいです。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)がある。


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