小売り覇権に陰り? 丸井の衣料PB撤退が意味するもの:磯部孝のアパレル最前線(1/3 ページ)
店舗ブランド「OIOI(マルイ)」としておなじみで首都圏を中心にファッションビル業態の商業施設を展開する丸井。その丸井がプライベートブランド(PB)事業からの撤退を決めた。
首都圏を中心にファッションビル業態の商業施設「OIOI(マルイ)」などを展開する丸井。その丸井がプライベートブランド(PB)事業からの撤退を決めた。同社が数年前から進めているビジネスモデルの転換策によるものだという。
これまで展開してきたメンズウェア「ビサルノ(VISARUNO)」、ウィメンズウェア「アールユー(ru)」、ウィメンズ雑貨「ラクチンシリーズ」の3ブランドを順次廃止する。PB商品を扱ってきた自主売場は今後、テナントと協業したイベント事業やショップ運営に関わるような共創型の自主売場へと切り替えていく。
PB事業で自主専門店運営に関わる従業員の人数は現在1150人程度。従業員はネット企業の誘致や店舗運営支援、フィンテック事業、新規事業などに配置転換する予定だ。今回は丸井のPB撤退が意味するものについて考えてみたいと思う。
まずは、丸井と日本のPB商品の普及過程について振り返ってみたい。
丸井の創業は1931年、「丸二商会」からのれん分けを受けて独立し中野区に開店したことから始まる。丸井の代名詞ともいえるクレジットカードは、日本で初めてのクレジットカードとなった。それまで月賦と呼ばれていた支払い方法をクレジットカードにして発行したのが60年のこと。
72年頃より若年層中心をターゲットにしたアパレル中心の小売業に転換、80年代のDCブランドブームをけん引した。
コントグループの「コント赤信号」の持ちネタだった、服装を一流ブランドで固めたリーダーの渡辺正行に向って「それだけそろえるの、高かったろう?」とメンバーの小宮孝泰が尋ねると「赤いカード」を出して「丸井よ!」(=全て月賦)と答えるギャグが人気となり、月賦の丸井の名が一躍全国区に知れ渡ることとなった。
こうしてマルイは店舗ブランドとして認知を広げ、駅前一等地に次々に出店してルミネやパルコなどといったファッションビルと競合していった。
関連記事
- 売り切れ続出の「ファミマソックス」はなぜ誕生したのか 目指したのは“雨でぬれた時に買う”商品からの脱却
今、若者の間で「ファミマの靴下」が売れている。ファミリーマートが展開する「コンビニエンスウェア」の一つ、「ラインソックス」だ。なぜファミマは衣料品の展開に力を入れたのだろうか。 - なぜデサントはカスタムして“着続けられる”ウェアをつくったのか
スポーツブランドの「デサント(DESCENTE)」を展開するデサントが、1着をカスタムして着続けられる新プロジェクト「DESCENTE CONNECT」を発表した。 - 青山商事の「“AI”よしこママ」第2形態に進化 寄せられた悩みで最も多かったのは?
「洋服の青山」を展開する青山商事は、スナックのママを“AI化”した悩み相談チャットボットサービス「AIチャットボット スナックママ『よしこ』」の累計相談数が8万件を突破したと発表した。 - おしゃれの象徴だったアパレルの「買い物袋」 有料化から1年で各社の対応に差が
2020年7月から全国一斉にレジ袋有料義務化が始まった。導入からおよそ1年が経過し、マイバッグやエコバッグ使用の浸透度合いやアパレル業界の対応、今後の課題感について取り上げてみたい。 - アウトドアブーム再来 バブル崩壊後に起きた1次ブームとの違い、今のトレンドは?
現在はアウトドアブームだという声が聞こえてくる。実は、過去にもアウトドアブームが巻き起こっていたのをご存じだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.