小売り覇権に陰り? 丸井の衣料PB撤退が意味するもの:磯部孝のアパレル最前線(2/3 ページ)
店舗ブランド「OIOI(マルイ)」としておなじみで首都圏を中心にファッションビル業態の商業施設を展開する丸井。その丸井がプライベートブランド(PB)事業からの撤退を決めた。
国内におけるPB商品の始まりは「スーツ」
丸井のPB、ビサルノがスタートしたのは78年。日本におけるファッションPBの始まりとされているのは、大丸が59年に発売した紳士服ブランド「トロージャン」で、食品についてはダイエーが翌60年に発売した缶詰「ダイエーみかん」。
60年ごろから大手百貨店やスーパーマーケット、日本生活協同組合連合会がPB商品作りに乗り出しているが、当時は大手メーカーが展開するナショナルブランド(NB)商品に比べて安いものの品質が劣り、経済情勢が悪いときにブームにはなったものの定着までには至らなかった。
そうした状況を乗り越えてPB商品が本格的に立ち上がったのは80年代半ばからで、もともと西友のPB商品として始まった「無印良品」の独立。“価格破壊”の象徴として、ダイエーによる「セービング」商品などが取り上げられるようになり、PB商品が一定の地位を得ることになった。
2006年頃からの石油や原材料の高騰、サブプライムローンを発端とする経済危機によるNB商品の価格上昇と消費者の節約志向の高まりから、再びPB商品が脚光を浴びる。日経トレンディの『2008年ヒット商品ベスト30』の1位に「PB」が、日経MJの『2008年日経ヒット商品番付』の西の横綱にセブン&アイ・ホールディングスが展開する「セブンプレミアム」、イオングループの「トップバリュ」が選出された。
09年以降、大手流通グループでは売り上げに占めるPB商品の比率をより高める方針と報道された。市場規模は約3兆円(12年現在)と推定されている。こうして、物作りが可能な発注量が見込める販売力を持った小売店が、商社、メーカー、工場などに直接発注して商品手配時期や小売価格などの主導権を握る。アパレルでは、特に小売主導型のビジネスが主流となって現在に至る。
同じPB戦略として、今日まで伸長しているアパレルPBは安価な小売店が中心となっている。特にユニクロは国内アパレルのPB戦力の一番の成功者であることは揺るぎない事実で、国内店舗の大型化(店舗面積1000坪級)が本格的に始まったのが07年のこと。この年は神戸ハーバーランド店、世田谷千歳台など計21店舗を一気にオープンさせ、レディス、インナー商品に力を入れた。当時の国内ユニクロ事業の売上は4247億円だったが、今や8068億円と倍増している。
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