面白そうな場所ができていた 京阪電鉄「なにわ橋駅」のB1:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
京阪電鉄の中之島線「なにわ橋」の改札外コンコース「アートエリアB1」は、駅構内の遊休空間の興味深い事例だ。京阪電鉄、大阪大学、NPO法人ダンスボックスが共同で運営。改札口の隣。大阪の中心部にアーチストや学識経験者が集う、なにやら面白そうな場所ができた。多才な人々が集まり、新しいコトが起こるかもしれない。
京阪電鉄の事情と勝算
京阪電鉄の起点は「淀屋橋駅」だ。かつて中之島で米市を開いた淀屋が、中之島振興のためにかけた橋にちなむ。ただし、淀屋橋延伸は1963年(昭和38年)だ。京阪電鉄は半世紀を経て、商業の中心地延伸の悲願を達成した。
京阪電鉄淀屋橋駅は便利なターミナルだ。地下鉄御堂筋線に乗り換えればキタにもミナミにも行ける。これは京阪電鉄沿線全体の価値を上げた。沿線人口が増え、通勤客が増える。複々線化を推進し列車を増やした。そこに新たな問題が生まれた。淀屋橋駅が手狭になった。複々線化でもっと列車を増やせるはずだけど、淀屋橋駅のプラットホームが足りない。
京阪電鉄淀屋橋駅は珍しい構造だ。プラットホームは1本だけ。線路は3本で、4つの乗り場を持つ。1番線と4番線は1本で、プラットホームの前後に電車が縦列駐車する。2番線はプラットホームを切り欠いた所にある。3番線は4番線の向かい側だ。つまり、実質的には3番線で、奥の4番線を使うには3番線を開ける必要がある。
ちなみに阪急電鉄梅田駅は3路線で9番線、1路線につき3番線まである。阪神梅田駅は4番線まで。近鉄の大阪上本町は地上と地下を合わせてプラットホーム9面で線路8本を擁する。
京阪電鉄は淀屋橋駅の構造を駆使して列車を増発したけれども、実質的には3本の乗り場で4番線は蔵出しになる。列車が折り返すとポイントをふさぐから、どうしても運行間隔は詰め切れない。さらに困ったことに、混雑が続けば将来は最大8両編成を10両編成にしたい。
ただし、淀屋橋駅は切り欠いた2番線が最大7両分の長さ。1、3、4番の乗り場は8両編成だ。10両編成を導入するなら、淀屋橋駅の3番線を2両長くすると、2番線は使えない。1番線と4番線の共用は廃止して1番線のみ。つまり、線路2本プラットホーム1面になってしまう。
その時のために淀屋橋駅を拡幅したいところだけれども、地下駅の拡幅はほかの建物の基礎や配管など埋設物が多く難しい。大手私鉄の中には、ターミナル手前の駅から地下鉄と相互直通運転を実施して列車を分散させている。しかし京阪電鉄には相手となる地下鉄がなかった。
そこで、天満橋から分離する新線を建設し、もうひとつのターミナルを作れば列車を分散できる。ここで京阪電鉄は、なにわ筋線計画の中之島駅に注目した。中之島まで線路を作れば、淀屋橋駅で御堂筋線に連絡したように、中之島駅でなにわ筋線に連絡できる。
大阪市と京阪電鉄の利点が一致し、中之島線が上下分離式により建設された。
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