「40施設を売却」と報じられたプリンスホテルは“崖っぷち”なのか 現執行役員が語った生き残り策とは:瀧澤信秋「ホテルの深層」(2/4 ページ)
プリンスホテルが進めてきたブランド戦略。3ブランド展開と共に進めたのがエリア体制だ。プリンスホテルの売却で何が変わるのだろうか。
プリンスホテルとグローバルスタンダード
武井氏が取り組んだ改革の一例として「品川・高輪エリア」を見てみよう。品川プリンスホテルやグランドプリンスホテル新高輪といった、まさにプリンスホテルをイメージするホテルが点在するエリアだ。
海外のホテルで長らく働いてきた武井氏がまず感じたのは「グローバルスタンダードを考えていない」という点だった。「国内の基準でやっていたホテルをグローバルスタンダードに照らし合わせればどうなるのか?」という問いからスタートした。
高輪と聞いてイメージするのは何か? やはり“日本庭園”であり“和”だろう。とはいえ難しいのは「グランドプリンスホテル高輪」「グランドプリンスホテル新高輪」「ザ・プリンス さくらタワー東京」の各施設を“和という横串”で通した場合、それぞれをどう演出したらいいのか――。その辺りからひもとかないといけなかった。
水族館や映画館、ライブホールなどの施設も備えている「品川プリンスホテル」では“エンターテインメント”を打ち出すことは分かりやすかった。しかし、高輪・品川というエリアで考えた場合にはどうしたらいいのか? セントラライズ/ローカライズした方がいいものを分けなくてはならない。会社としてホテルブランドを3つに分けたが、具体的にどういった感覚でやるのかをより明確にする必要があった。
そうした問いに武井氏は、グローバルスタンダードという品質基準をもって臨んだ。東京シティエリアでいえば、「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」は5つ星、「ザ・プリンス さくらタワー東京」や「ザ・プリンス パークタワー東京」でいえば4つ星は獲得したい。グランドプリンスは4つ星に準ずるブランドで、プリンスホテルは3〜4つ星の間くらいとイメージした。こうして品質基準という“横串”が刺さった。
あとはそれぞれのホテルにキャラクターを立てなくてはならない。「グランドプリンスホテル高輪」は“トラディショナルジャパニーズ”、「グランドプリンスホテル新高輪」は“コンテンポラリージャパニーズ”、「ザ・プリンス さくらタワー東京」は“モダンジャパニーズ”とし、全体として“ジャパニーズアーバンオアシス”というコンセプトメイキングにより土台は作られた。無論、浸透にはまだまだ時間を要する。未だ道半ばといったところだろう。
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