元西友のプロマーケターがうなる、オーケーストアの差別化戦略:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 リテール×マーケ【前編】(1/4 ページ)
西友、ドミノ・ピザジャパンなどでCMOを務めた“プロマーケター”の富永朋信氏と、東急ハンズ・メルカリなどでCIOを務めた長谷川秀樹氏が対談。富永氏が語る、オーケーストアを研究すべき理由と、小売りに求められる「差別化戦略」とは──?
連載:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」
東急ハンズCIO・メルカリCIOなどを務め、現在は独立してプロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の道を進む長谷川秀樹氏が、個性豊かな“改革者”をゲストに酒を酌み交わしながら語り合う対談企画。執筆はITライター・ノンフィクション作家の酒井真弓。
プロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の長谷川秀樹氏が、改革者と語り合う本対談。今回のゲストは、Preferred Networksの執行役員CMO、富永朋信氏。日本コカ・コーラなど9社でマーケティング業務を歴任。そのうち、西友、ドミノ・ピザジャパン、Preferred Networksなど直近4社ではCMOを務めている。
新卒時からマーケティング一筋で、「生まれ変わってもマーケティングをやると思います」と言う富永氏に、長谷川氏が日ごろからの疑問をぶつけてみた。
マーケターはオーケーストアを研究すべき
長谷川: 僕は自分のテーマとして「同質化問題」というのがあって。特にスーパーは差別化が難しく、どのスーパーも有名メーカーの商品でほぼ埋まっていますよね。金太郎飴(あめ)状態のスーパーはどうすれば差別化できるのでしょうか?
富永: 長谷川さん、オーケーストアってどう思います? オーケーって行く人も行かない人も、「安くてお総菜がおいしい」とか「オネスト(正直)カード」というものがあるとか、どんな店か結構説明できるのではないでしょうか。
オーケーストアは、とにかくお客さまに安いものをお届けするという信念があり、それがオペレーションや品ぞろえに通底しているんですね。店に行くと「生鮮食品は品質第一、次に価格。加工食品はどこで買っても一緒なのでとにかく安くします」というポスターが貼ってあったり、「近隣で安い店があったら必ず値合わせします」「競合店対策のために安くしました」というPOPが出ていたりして、全面的に安さを推しているんです。
鮮魚は冷凍に徹しておいしさを担保するとか、精肉はそれぞれの店でA4等級まで提供できるようにするとか、カテゴリーごとに信念があるんですよ。
長谷川: なぜそんなにオーケーストアに詳しいんですか?
富永: ウォルマート傘下だった西友にいた際に研究したんです。オーケーストアってテレビCMもしていませんし、当時チラシも月一回程度と少なかった。でも、店舗であれだけ徹底的にコミュニケーションできると、お客さまが今私が話したくらいのことを言えるようになるんです。
店舗は最大にして最強のメディア。そこをどう使うかがマーケティングコミュニケーションの一番の面白みであって、差別化のための要だと思っています。
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