元西友のプロマーケターがうなる、オーケーストアの差別化戦略:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 リテール×マーケ【前編】(4/4 ページ)
西友、ドミノ・ピザジャパンなどでCMOを務めた“プロマーケター”の富永朋信氏と、東急ハンズ・メルカリなどでCIOを務めた長谷川秀樹氏が対談。富永氏が語る、オーケーストアを研究すべき理由と、小売りに求められる「差別化戦略」とは──?
給料、利益率、休日日数──小売りとメーカーを取り巻く課題
筆者: 小売りとメーカーって上下関係があるんですか?
富永: グッドクエスチョンですね。上下関係はありませんが、ことマーケティングに関しては、メーカーの方がマーケティングらしいマーケティングができるんです。
メーカーのマーケティングは、基本的に商品を作りブランドを構築し、高く売れるようにしたり、店頭で選んでもらえるようにするのが目的。それこそMBAで習うようなブランドマネジメントや4P(Product・Price・Place・Promotion)、STP(Segmentation・Targeting・Positioning)みたいなことをガチでやるんです。
小売りはというと、商品部と店舗運営部ににらみが利かないマーケティング部に入ってしまった場合、「来週この商品値引きするから大至急チラシ作れ」といった目先の話になりがちです。そういう意味で、メーカーのマーケティングの方が成長に有利な環境にいるのは否めない。メーカーから小売りに転職するマーケターもあまり聞かないですね。
長谷川: 僕は構造上の問題も含んでいる気がしていて。メーカーと小売業を平均値で比べると、メーカーの方が平均給与が高いし、営業利益率も高い、年間の休日日数も多いと思う。アンバランスだなと思っています。
富永: MBAを取った人の中にはマーケティングをやりたいという人も多い。でも、P&Gかウォルマートだったら、みんなP&Gに行くんですよね。理由は、MBAを取って就職するなら給料をアップさせたいから。
長谷川: 小売りが、メーカーのマーケター、カテゴリーマネジャー、ブランドマネジャーと対等に渡り合えるような人材を採用するためには何が必要ですか?
富永: 奥深い質問ですね。まず、メーカーの方が平均給与水準が高いのは明らかです。でも、それによって優秀な人が全員メーカーに集まるかというとそうではない。
メーカーと比べて総量は少ないかもしれませんが、小売りにも優秀な人材はたくさん入ってきています。そういう人が力を発揮できるようなカルチャーと、学びや活躍の場を作るのが大事だと思います。
長谷川: カルチャーというのは具体的にどういうことですか?
富永: 小売りのヒエラルキーって、商品部が横綱で店舗オペレーションが大関、マーケティングは前頭2枚目くらい。マーケティング組織がPOP屋・チラシ屋から脱却し、商品部や店舗運営部にインサイトを供給できる知恵袋のような役割になるには、まず経営層にマーケティングの価値を認めてもらい、番付をもう少し上げてもらう必要があります。
小売りの中に、マーケターを育てるというカルチャーが醸成されれば、志のある学生が入ってくれたとき、すごく成長できると思います。なぜなら小売りには、商品を仕入れて、陳列されて、お客さまが手に取るという「現場」が目の前にある。
厳しい環境ながら、いろいろなことに気付くチャンスも多いのが小売りのリアリティー。小売りで働く人自身がその面白さに気付けたら一番いいなと思っています。
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記事の後編では、はなまるうどんと丸亀製麺、松屋・すき家と吉野家についてなど、飲食店について対談。富永氏が、ブランド戦略の在るべき姿について語ります。
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