2015年7月27日以前の記事
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日本の金融所得税、実は庶民にとっては世界屈指の重税古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

岸田文雄総理は、金融所得課税を当面の間は引き上げない方針を述べた。この「当面」という言葉尻をとらえると、じきには増税するということになる。しかし、足元でささやかれている一律25%への増税は、本当に必要なのだろうか。実のところ日本は、我々一般人にとっては金融所得税がとても重い国でもある。増税するにしても制度設計から抜本的に見直す必要がある。

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分離課税の趣旨と逆行する金融所得増税

 そもそも分離課税とは、長年の活動によって積み上げられた利益を1つのタイミングで獲得すると、総合課税下で税負担が高まるという弊害を回避する趣旨で設けられたものだ。

 退職金はその趣旨が最も分かりやすい例だろう。退職金が得られるタイミングは退職時の一点のみで、そこに所得が集中する形となる。しかし、実際は毎月の労働の積み上げでなされたものであるため、退職時だけに注目して高い税率をかけるのは不合理だ。


イメージ(写真提供:ゲッティイメージズ)

 金融所得も長期運用を基礎とするのであればこれと同じことがいえる。そのため金融所得も分離課税となっており、当初は10%の税率が今は20.315%、そして25%と上がってしまえばむしろ総合課税にした方が有利な人が増えてしまう。

 かりに、岸田総理の掲げる分配に着目するのであれば、米国のように短期取引部分の税率を上げたり、段階課税によって超過累進課税にしたりといった工夫が必要になってくる。それでも一律25%とするのであれば、納税者が自身の所得から総合課税も選択するようにすべきだろう。

 預金金利が期待できない現代において、資産運用はもはや“金持ちだけのもの”ではない。このまま一律増税が実行されれば、「富裕層からの分配」ではなく「中間層以下からの回収」という悪影響が色濃く残ってしまう可能性がある。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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