列車が来なくとも、「駅」は街のシンボルであり続ける:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
京阪電鉄中之島線「なにわ橋駅」のコンコースに「アートエリアB1」という、産・学・NPOによる協創コミュニティーがある。ここで11月20日から22年2月27日に「鉄道芸術祭」が開催される。鉄道芸術祭のプレイベントで、筆者が鉄道芸術祭に参加するアーティストに向けて話した、駅の面白さを紹介する。
このゲームが鉄道を知る手がかりになるという話を16年にも、「ゲーム「A列車で行こう」で知る鉄道の仕組み」として書いた。
この時は経営効率を高めるために列車の運行頻度を高める仕組みを紹介した。今回は駅に焦点を当てる。ゲームの中で「駅」は2つの役割を持つ。「乗客と街の活力を変換する装置」と「列車を制御する装置」だ。
「乗客と街の活力を変換する装置」を説明するために、ゲームを起動してみよう。あらかじめ大都市が存在するマップを選び、大都市の駅Aから線路を延ばし、未開発の土地に駅Bを作る。そして2駅間に列車を走らせる。B駅周辺は目的地がないから、初めは列車の乗客が少ない。
しかし、貨物列車で建設資材を運んでしばらく放置すると畑が発生する。物好きな人が列車に乗ってやってきて、そのうちの何人かが農業を始めた。さらに列車を運行し続けると畑が広がる。店ができる。戸建て住宅ができる。アパート、マンションが建つ。オフィスピル、デパート、娯楽施設も増える。
そして、それぞれの建物から乗客が発生し、列車に乗る。当初は駅A発駅B行き列車しか乗客が乗らず、一方通行だった。しかし、だんだん逆向きの乗客も増えてくる。鉄道の売り上げは2倍になってさらに増えていく。
ゲームの中で「駅」は、「旅客列車の客を降ろして、町のエネルギーに変換する」役割と、「町で発生した発展エネルギーを乗客に変換して旅客列車に乗せる」役割を担っている。
乗客は列車で別の町へ行き、そこで降りて町のエネルギーになる。この循環を維持すれば、街は発展し、乗客も増えて、鉄道会社の経営が安定する。これはリアルな世界にも通じる。
列車の運行が減るとどうなるか。不便な土地に人は住まない。建物が消えていく。過疎化だ。これもリアルな世界では起きている。
関連記事
- 2025年の大阪・関西万博で、鉄道の路線図はどうなるのか
2025年に大阪、夢洲で「2025年大阪・関西万博」が開催される。政府は主要公共交通機関に大阪メトロ中央線を位置付けた。このほか会場へのアクセスには船とバス、さらに具体化していない鉄道ルートが3つ、近畿日本鉄道の構想もある。また会場内の交通には、3種類のモビリティが計画されている。 - “日本一高い”北総鉄道は値下げできるのか 「やはり難しい」これだけの理由
千葉ニュータウンを走る北総鉄道は日本一運賃が高い鉄道の1つ。理由は膨大な建設費が運賃に乗っていたから。しかし6月23日発表の決算には、2022年に累積損失を解消、値下げを検討するとある。値下げされても残念ながら相場より高い運賃が続く懸念がある。そこで筆者が、確実に値下げする方法を考えてみた。 - 定期代が上がる!? 鉄道の“変動運賃制度”が検討開始、利用者負担は
鉄道で「変動運賃制度」の検討が開始された。そもそも、通勤通学定期券によるボリュームディスカウントは必要だったのか。鉄道会社の費用と収益のバランスが、コロナ禍による乗客減少で崩れてしまったいま、改めて考えてみたい。 - 中央快速線E233系にトイレ設置、なんのために?
JR東日本の中央線快速で、トイレの使用が可能になることをご存じだろうか。「通勤電車にトイレ?」と思われた人もいるかもしれないが、なぜトイレを導入するのか。その背景に迫る。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.