列車が来なくとも、「駅」は街のシンボルであり続ける:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
京阪電鉄中之島線「なにわ橋駅」のコンコースに「アートエリアB1」という、産・学・NPOによる協創コミュニティーがある。ここで11月20日から22年2月27日に「鉄道芸術祭」が開催される。鉄道芸術祭のプレイベントで、筆者が鉄道芸術祭に参加するアーティストに向けて話した、駅の面白さを紹介する。
泊まれるといえば、上越線の土合駅はグランピング施設になった。これはJR東日本がはじめた「JR東日本スタートアッププログラム」のひとつだ。ベンチャー企業などからアイデアを募り、駅や鉄道などJR東日本の施設や情報資産を活用して事業化する。
類似の取り組みは青梅線の白丸駅でも行われている。こちらは「沿線まるごとホテル」と名づけられ、無人駅をホテルのフロントやロビーの機能として使い、駅周辺の空き家をホテルの客室とし、地域の人々がホテルのキャストとなる。
変わったところでは、しなの鉄道の追分駅は雑誌「暮しの手帖別冊・あたらさん」の編集部になった。木次線の出雲大東駅は住民団体の「つむぎ」が指定管理者となり、きっぷの販売、特産品の販売、イベント運営、文化教室などに活用されている。
自治体の分室などに使われる事例も多く、飯田線温田駅の駅舎は農協に貸与されているし、山陰本線の荘原駅は駅舎を建て替えた上でシルバー人材センターになった。
無人駅の再利用の理由の筆頭は「防犯」だ。無人の建物は地域の死角になってしまいがちで、「そこに誰かがいる」「使われている」こと自体が重要だ。次に駅舎の保守管理のため。使われていない建物は傷みやすい。
鉄道事業者からみると、運行障害時の退避拠点として保持したい。そこで、低価格でも借り手がついているとありがたい。つまり、おトクな賃貸物件として、ビジネスや文化交流、福祉目的で使ってほしい。自治体としては災害時の退避、情報拠点にもできる。
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