旅客激減の羽田空港が、ECの売り上げを“1年で100倍”に キーワードは「デパ地下客」:リアルとネットの相乗効果(2/2 ページ)
コロナ禍で羽田空港の航空旅客数とともに、空港での商品売り上げも減少──。しかしECに注力し、1年間で月別最大5倍ほどアクセス数を伸ばした日本空港ビルデング。急成長の鍵は「デパ地下客」だった。
空港という「リアルの場」と、ネットを掛け合わせる
楽天、Amazon、Yahoo! ショッピング──ECサイトは言わずもがな、先発の企業が多い。後発として戦っていくために、どのような作戦を立てたのか。「羽田空港というリアルの場を持っていること」を強みとして捉え、構想していったと堀さんはいう。
その一つが、免税品の予約サイトだ。空港の免税店の商品をネットで予約し、飛行機に搭乗する前に売店で受け取れる。免税品は購入したいが、広い空港で商品を見て回る時間はなるべく短く抑え、その分観光に時間を回したいというニーズを捉えている。ネットで品ぞろえが分かることが、顧客の利便性の向上にもつながる。
同社では、空港の旅客の「旅マエ・旅ナカ・旅アト」の3つのステージに分けて、それぞれタッチポイントを用意したいと考えている。
空港を訪れる「旅マエ」は、遠出を楽しみにする気持ちから検索経由でECやSNSにたどり着き、サービスの利用に結び付く人が多い。免税品の予約サイトも、旅マエの施策に含まれる。
空港に訪れている「旅ナカ」のステージでは、スマホを見なくても自然と目に入るサービス導線を作るために、デジタルサイネージを活用した実証実験を行っている。サイネージのQRコードを読み取ると、商品の詳細な情報や店舗ごとのリアルタイムの混雑状況を把握できる。密を避けたいwithコロナ時代には利便性が高いサービスだ。
「旅アト」には、ECを活用してもらう。顧客アンケートやインタビューでは「旅行が終わっても、空港の限定品をまた食べたくなる」という声が届いており、こうした顧客にフォローアップしていきたい考えだ。
一人ひとりに、過ごし方を提案できる空港へ
2019年までは例年、年間8000万人超の利用客が行きかっていた羽田空港。コロナ禍の今となっては懐かしい光景だが、帰省ラッシュ時の混雑は毎年ニュースでも取り上げられていた。
アフターコロナ時代にこうした状況が戻ってきたとしても、顧客により良いサービス体験をしてもらうために、空港で手に入れたいものを事前予約して受け取るサービスに注力していきたいと考えている。
顧客体験の向上という観点でいえば、ロビーや検査場の混雑具合が分かれば、旅行の予定も立てやすい。さまざまな店舗やサービスの混雑状況が一目で分かるサービスを構想している。
レンタルWi-Fiの受け取り、食事、免税店での買い物、散髪、歯科──空港は旅の経由地というだけではなく、多くの旅客にとってさまざまなサービスを受ける場所でもある。しかし、広く混雑した空港で、思い通りの時間を過ごすことは難しい。
旅の最後の楽しみとして精力的に動き回りたい人、疲れているのでゆっくりしたい人など、一人ひとりのニーズにあわせて空港内のさまざまなサービスを提案し、またスムーズに利用してもらえるようなサービスが理想だという。
「リアルとデジタルの両面を良くしていって、お客様の楽しみを最大化させていきたいですね」(堀さん)
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