ASEANでモテモテだった日本の企業 その将来に漂う暗雲:何が起きているのか(1/4 ページ)
ビジネスシーンで、ASEANの有力財閥にモテモテだった日本企業。誠実な姿勢が評価されていたが、安心していられない事態になっていると筆者は主張する
いきなりプライベートな話から入って恐縮だが、私はこれまでに4冊の本を世に出してきた。そのうちの2冊は『ASEAN企業地図』だ。ASEANの財閥を図入りで解説した書籍で、第1版と第2版がある。今回のコラムでは、この本で紹介されている財閥企業について触れながら、日本企業の今後のASEANにおけるプレゼンスについて考察してみたい。タイトルにあるように、日本企業はASEANにおいて現地企業の提携相手として非常に人気が高い。しかし、今後は「モテモテ度が一気に低下するかもしれませんよ」という話だ。
1万を超す日本企業がASEANに進出済み
さて前回のコラムでは、日本の人口が、今後大幅に減少することが見込まれていることから、中堅・中小企業に至るまで海外市場でのアクセスを有しないと生き残ることができないと指摘した。
人口が増大している地域は世界中で見受けられるが、6億人超の人口を擁するASEANは、日本からの距離も近く、日本の企業にとって間違いなく重要な市場である。実際、進出の歴史は長い。少し前のデータになるが、大企業だけではなく、中堅・中小企業も含めて1万1300社の企業がASEANで事業を行っている(出所:帝国データバンク「ASEAN 進出企業実態調査」)。ASEANでは、近年の経済成長で中間層が着実に育ってきている。つまりASEAN市場は、人口と所得がダブルで成長している稀有(けう)な市場なのだ。目下ASEAN各国もコロナで苦しんでいるが、市場の有望性は変わらない。日本の大規模な人口減を見越して、より多くの日本企業がこの魅力的な市場に足場を築くことを期待したい。
海外で事業を行う場合、完全独資で進出する場合もあるが、現地でパートナーを見つけて共同で事業を手掛けることが多い。合弁会社を設立したり、資本業務提携を行ったりと形態はさまざまだが、いずれにしても現地事情に精通したパートナーと協業関係を築くのである。ASEAN各国には、財閥といわれる企業集団が多数あり、現地の経済に大きな影響力を持っている。日本企業が海外で事業を行う際、パートナーに頼るのは、顧客基盤、効率的なサプライチェーンの構築、労働者の雇用・解雇、規制当局との折衝、事業に必要な不動産の取得と多岐にわたる。財閥傘下の企業は、それぞれのセクターにおける有力企業であるケースが多く、日本企業が求めるこれらの要素をほぼ間違いなく提供できる。
有力な財閥になると、製造業、サービス業、金融と広範な事業ポートフォリオを有している。下記の図表は、拙著から抜粋だが、前者はタイのCPグループ、後者はフィリピンのアヤラグループといういずれもASEANを代表する大財閥だ。
いずれも広範な事業ポートフォリオを有し、そこで提携するさまざまな日本企業や他の外資系企業の名前が目を引くであろう。
1万を超す日本企業がASEANに進出しているといったが、その多くは現地パートナーを有していると目される。全てがCP、アヤラのような大財閥ではなかろうが、それでも現地の相応に有力な企業と提携関係を結んでいるケースが多い。では、日本企業と組みたくなる理由は何だろうか?
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