オーケーに関する2つの誤解 関西スーパーが守ったものと失ったものとは?:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
買収劇で渦中のオーケーと関西スーパー。小売・流通業界に筆者は、オーケーに関する「2つの誤解」が問題を複雑にしていると指摘する。加えて、関西スーパーが守ったものと失ったものを解説することで、今回の騒動をひもといていく。
この争奪戦を巡っては、関西スーパーとディスカウントスーパーは合わないとか、首都圏のスーパーと物流シナジーがないとか、さまざまな意見が報じられているが、筆者の個人的な感想を述べるなら、関西スーパーの生鮮管理とオーケーのグロサリー低価格提供が合体すると、関西では最強レベルのスーパーが生まれる可能性があると思っている。
オーケーというスーパーになじみがない関西の人にとって、「ディスカウントストア」と聞くと、安物をたたき売りしているイメージを持っている人も多いだろう。しかし、そこには明らかな誤解がある。
オーケーは品質の担保されたナショナルブランドを、競合比で明らかに安く売ることが消費者に支持されているのであり、地域によっては店舗駐車場に高級車が並んでいることもあり、単なる「安かろう悪かろう」ではない。また、オーケーの集客力は、現在の関西スーパーと比較にならない水準であり、関西スーパーの1店当たり売り上げ約20億円に対して、店舗面積にそこまで大きな開きがない中でオーケーは約40億円と、圧倒的なレベルである。もし、この集客力とナショナルブランドの低価格提供というオーケーの強みに、関西スーパーの伝統的な生鮮売場が合体するとしたら、きっとはやるに違いない、と考えられる。
オーケーは関西スーパーを裏切ったのか?
今回の騒動を巡って「かつてオーケーが関西スーパーに師事し、人材教育も受けていた弟子筋であるのにもかかわらず、その恩義も忘れての仕打ちか」といった指摘もあったように見受けられる。この点についても、多くの認識が間違っていると筆者は考えている。
そもそも、日本の食品スーパーという業態を創り出したのは、関西スーパーなのであり、日本の食品スーパーのほとんどが関西スーパーの弟子筋か模倣者であることは、今となってはあまり知られていない。
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