紙で保存ができなくなる 改正電子帳簿保存法がもたらす、意外な落とし穴(3/3 ページ)
2022年1月に、改正電子帳簿保存法が施行される。これは、これまで紙で保存されることが義務付けられていた税金関係の書類を、電子化して保存するための条件を緩和するものだ。DX花盛りの昨今、ペーパーレスを法律面からも後押しすることを狙っている。ところが、確かにペーパーレスが可能になる一方で、電子データの保存ルールには意外な落とし穴がある。
個別はあっても、全体に対応するサービスがない
電子インボイス制度の導入や経費精算の電子化など、昨今、こうしたバックオフィス業務の電子化を支援するSaaSが大量に登場し、企業の導入が進んでいる。ところがこれらは、請求書なら請求書、領収書なら領収書と特定の内容に特化しているものがほとんどで、契約書、領収書、請求書、納品書などの重要書類全体に対応する、手頃な保管サービスはこれまでなかった。
ここに目を付けたのが、請求書受取サービス「invox」を提供するdeepworkだ。「これまでは数十万円などの利用料がかかる大企業向けのシステムしかなかった。高額なサービスかExcelで運用するかの2択になってしまう」と、横井朗社長は話す。
同社は、あらゆる国税関係書類を、改正電子帳簿保存法の求めに応じた形で保存できるサービス「invox電子帳簿保存」を10月27日に提供開始した。あらゆる書類を取り込みでき、書類はオペレータがデータ化する。そのデータに基づいて検索できるのはもちろん、原本と並んで確認することや、訂正削除の履歴も残せる。
料金は、初期費用無料で、オペレータではなく自身でデータを入力するミニマムプランなら月額1980円。オペレータに任せるベーシックプランは11月リリース予定で、月額9800円を実現した。
同社は改正電子帳簿保存法のQ&Aや、実務者向けのセミナー動画なども公開しており、これを機に、新たな顧客を取り込む構えだ。実際、改正電子帳簿保存法の問題に気づいた企業の担当者からは、問い合わせが相次いでいるという。
実は、電子帳簿保存法の改正の認知は低く、Sansanが請求書関連業務に携わる人を対象に8月に行った調査でも、「改正内容まで理解している」人は8.8%に留まった。しかし実際には、自社が電子化を進めなくても、電子データで書類を受け取っただけで対応を求められるという、意外な落とし穴がある。しかも施行は来年1月だ。
このままでは、電子データを受け取った場合の管理を嫌い、「書類は紙で送ってほしい」という企業も出かねない。企業は早期の対応判断を求められることになる。
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